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 口止め料をめぐる一連の出来事がこれまで問題視されてきたのは、コーエン氏を経由した支払いが2016年大統領選直前の10月に行われたものだったため、選挙違反に相当する可能性が指摘されてきたからだ。

「複雑な事件」トランプ氏が“重罪”で起訴のワケ

 BBCによると、コーエン氏は2018年8月、ダニエルズ氏を含む2人の女性への口止め料支払いをめぐり、脱税や選挙資金違反などの罪を認めて服役した。コーエン氏はトランプ氏の指示で「選挙結果に影響を与えるため」、13万ドルを支払ったと証言。トランプ氏による金の払い戻しがあったことも証言している。

 フォーダム大学のシェリル・ベイダー教授(法学) は、「フィクサー」だったコーエン氏がポルノ女優にお金を払い、トランプ氏との関係を口外しないよう立ち回ったことがことの発端だというが、「複雑な事件」だと話す。

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「秘密保持契約そのものは犯罪ではありません。報道陣に話さないように誰かにお金を払うことは問題ないのですが、コーエンが実際にポルノ女優にお金を払っていたことを世間に知られないようにするために、トランプがコーエンに金の払い戻しをして、虚偽の事業記録を提出しました。これが犯罪です」

 ニューヨーク州では虚偽の事業記録を提出することは犯罪だというが、通常こうした行為は“軽犯罪”に値するという。だが、今回トランプ氏は34件の“重罪”で起訴されている。一体なぜか――。

2007年 スペシャルゲスト、ザ・バンカー役のドナルド・トランプ -- (Photo by Trae PattonNBCU Photo BankNBCUniversal via Getty Images via Getty Images) ©getty

検察の前に立ちはだかる“法的ハードル”

「重罪となるには、虚偽の事業記録がほかの犯罪を助長または隠蔽するものでなければなりません。ほかの犯罪とは、税法違反や選挙法違反などのことです。

 なぜなら、選挙寄付があった場合、一定額以上は違法だったり、記録したりしなければならないというルールがあるからです。また、選挙運動で支出をした場合も同様に、適切に記録されなければなりません。また、金額は問いませんが、これもきちんと記録しなければなりません」(同前)

 要するに、虚偽の事業記録を作成すること自体は軽犯罪だが、税法や選挙法の犯罪を隠蔽するために行ったとすると重罪になる可能性があり、トランプ氏は「そういった罪の問われ方をしている」のだという。

 だが、今回のケースは検察にとっても難しい事件となりそうだ。「検察が乗り越えなければならないさまざまな法的ハードルがあるのです」とベイダー教授は話す続ける。

 その一つが時効だという。ニューヨーク州では、軽犯罪は2年、ほとんどの重罪は5年で時効が成立するという。