米国のドナルド・トランプ前大統領が34の罪で起訴――。米国の大統領経験者が起訴されるという前代未聞の事態が起きた。

 トランプ氏は2024年の大統領選挙への出馬を表明しており、米国内では熱狂的なトランプ信者も多く、政治的な緊張が高まっている。

ポルノ女優1700万円、元モデル2000万円…

 マンハッタン地区検察が公表した起訴状 などによると、トランプ氏は2016年の大統領選挙を前に、自身にとって不利な情報を隠蔽するため、不倫関係にあったポルノ女優ら計3人に口止め料を支払ったとされる。その支払いを隠すために事業記録を改ざんしたとして、34の罪に問われている。

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 内訳は、ポルノ女優に13万ドル(約1700万円)、同じく不倫関係にあったとされる元モデルに15万ドル(約2000万円)、トランプ氏に婚外子がいるという情報を持っていたというトランプタワーの元ドアマンに3万ドル(約400万円)を支払ったというもの。

 一方のトランプ氏は日本時間の5日未明、ニューヨーク市内の裁判所に出廷し、すべての罪状について無罪を主張した。出廷後、フロリダ州パームビーチの邸宅マール・ア・ラーゴにて演説を行ったトランプ氏は、自身の支持者らに向けて次のように述べた。 

「今、わが国ではかつてない規模の選挙妨害が行われている」

「この偽の事件は2024年の大統領選挙を妨害するということだけを狙ったものだ。即刻取り下げられるべきだ」

 2024年の大統領選は、同年春ごろに予備選などの活動が本格化するが、この時期までに判決が出ない可能性があり、選挙戦と裁判が同時進行するという異例の事態が予測されている。

 

キャッチ・アンド・キル(口止め工作)の詳細な手口

 検察の陳述書(Statement of fact) には、トランプ氏は“キャッチ・アンド・キル(catch and kill)”という手法で、性的な関係を持った女性2人とトランプタワーのドアマンの計3人に対し、口止め料を支払ったことが時系列で記されている。

 キャッチ・アンド・キルとは、スキャンダルを捕まえて(キャッチ)、抹殺(キル)する手法のこと。個人や団体にとって不都合な事実について、その事実を公にする権利を買い取るというプロセスを指す。

 検察の陳述書では、口止め料が支払われた人物の実名は記載されていない。だが、米紙などのこれまでの報道で、ポルノ女優とモデルの実名が報じられている。