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 儚(はかな)さや柔らかさを手軽に演出するゆるふわ巻き髪に眉下長めの厚めパッツンが付いていれば、それは一見「私は自分の可愛らしさを素直に肯定しています」というメッセージに見えなくもない。しかし、抜け感のあるサイドの髪と対照的に全力で額を隠すと、隙のなさがかえって目立つのです。

 なんにせよ、当人の思惑以上に御し難い印象を与えるのがパッツン。私は前髪に強固な癖があるため、物理的にストンとしたパッツンができません。それでもストレートパーマをかけ、先述のボブパッツン以外にも何度かパッツンにトライしました。そして毎回、おおむね不評。異性からは特にです。それでもパッツンにあこがれたのは、パッツンという甲冑と、私のコントロール不能な自意識の相性が良かったからだと思います。

 ちなみに、「女性議員」で画像検索すると、額が見えないパッツン議員の写真はゼロ。在京テレビ局所属の女性アナウンサーを検索しても、ほぼゼロ(元モー娘。のテレ東アナ、紺野あさ美ぐらい)。パッツン女がそういった職種を好まないという解釈もありますが、いやーどうだろう、それだけではないような気がします。

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 女性議員もアナウンサーも、広く人様からの支持を頂いてナンボの商売です。テレビや雑誌などの一方通行のメディアに出ることが多い分、第一印象で不信感や違和感を抱かれてしまうと、信頼を回復するのが難しい仕事です。そこにパッツンが少ないということは、大人のパッツンには見る者の心をざわつかせるなにかがあるということでしょう。茶髪は形骸化した不良の象徴なので敬遠されるのもわかりますが、なぜパッツンまでもが?

 問題は、パッツンではなく額の露出度なのだと思います。

 先述の通り、私はパッツンを甲冑だと思っています。ほかの前髪をそう感じたことはありません。パッツン甲冑がなにを守っているかといえば、素の自分です。おでこなんて顔の3分の1にも満たないのに、ここさえ隠せていれば弱点を隠すだけでなく、強くなれる気さえしてくる。おでこを全開にすると落ち着かないという女性もいます。つまり、額は素の自分と同義。そこに介入されたくないから、進入禁止! とデカデカ書かれた鉄壁で塞ぐのです。

 また、女性議員と女性アナウンサーはどちらも「その口から伝えられる情報に、嘘偽りはない」と聞き手を安心させる必要があります。この二業種でパッツンが見つからないならば、額を隠すと見た目で信用を得づらくなると推察できる。つまり、おでこ丸出しには公明正大さを印象付ける作用がある。やましいことがなにもないから、素の自分をさらけだせると解釈されるのでしょう。

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