人は福永裕基をオールドルーキーと呼ぶ。もう26歳だからだ。社会人を4年も経験した大人は1年目の意気込みを過不足なく答えた。

「即戦力としてチームの勝利に貢献したいです。ポジションや打順にこだわりはありません。与えられた場所でしっかり結果を出したいと思っています」

 完璧だ。そこで私はもう少し踏み込んだ。年齢を本人はどう受け止めているのか。

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「正直、自分が一番気にしていないんじゃないですかね。まだまだ伸びしろしかないですし、成長できると思っています。毎日、野球がうまくなりたいです」

 心は純粋な少年だった。日々、新たな知識を得て、練習し、進化する。2月のキャンプもその連続だった。

福永裕基 ©時事通信社

短所の改善に繋がったテニスラケットを使った練習

「バッティングは和田(一浩)さんに教えてもらうことが多かったんですが、驚いたのはテニスラケットを使った練習でした。もちろん、初めてで、正面からテニスボールを投げてもらって、ワンバウンド目を両手で持ったラケットでセンター方向にライナーで打ち返すんですが、めちゃくちゃ難しかったです」

 テニス初心者の福永はフライを連発した。

「上半身でラケットを振ると、ダメなんです。でも、下半身と体幹を意識して体を回転させると、自然とラケットが面で使えてライナーが飛ぶんです」

 これが短所の改善に繋がった。

「僕の長所はライト方向へ長打を打てることなんですが、その反面、少しずれると、すぐバットのヘッドが返ってしまうので、サードゴロやショートゴロが多いんです。だから、和田さんには『ヘッドを柔らかく使おう。重みを感じよう。ボールをバットに乗せよう』とずっと言われていました」

 3月15日、広島とのオープン戦。福永はバンテリンドームナゴヤの左中間スタンドへ3ランを叩き込んだ。

「インコースの甘い球を待っていました。下半身と体幹を意識して、体がクルっと回って打てました。狙った球を引っ掛けることなく、一発で仕留められたのは自信になりましたね」

 勢いそのままに福永は開幕スタメンを掴んだ。開幕戦でプロ初安打。その後もヒットを重ねたが、そこは厳しい一軍の舞台。次第にサードゴロ、ショートゴロが増えた。しかし、練習は嘘をつかない。4月9日、横浜スタジアムでのDeNA戦。第1打席で二塁打を放った。

「一瞬、センターが前に来て、そこからグンと伸びて頭の上を越えていきました。ヘッドをうまく使えました。センターへライナーが飛んだということはテニスの成果だと思います」

 4月11日、バンテリンドームナゴヤでの広島戦。今度は九里亜蓮の食い込むツーシームをセンターへ弾き返した。

「バットを内から出して、面で使えました。今までなら、引っ掛けていたと思います。試合後、和田さんに『今日のセンター前は成長している証拠』と言ってもらえました」