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 健さんの映画、刑務所でも見てほしいものがいくつもありますが、この作品は駄目でしょう。確かに「脱獄を煽る」内容と言えるからです。

 許されると言えば、降旗康男監督作品「あなたへ」がいいかもしれません。健さんが刑務所の指導技官役で出演し、ロケ協力の御礼を伝えるために富山刑務所に行ったぐらいですから。

 他には山田洋次監督作品「幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ」「遙かなる山の呼び声」は許されると思います。改心して生き抜く男の姿があります。松田優作、マイケル・ダグラスと共演したリドリー・スコット監督作品「ブラック・レイン」では大阪府警の刑事役ですから、こちらも見てもいいかもしれません。この作品で健さんは犯人を捕まえる側です(そして実は私は、少年課の刑事として映っております)。

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網走刑務所には属性『B』の収容者だらけ

 映画のことを書き出したら終わらないので、まずはリアル版「網走刑務所」のほうからご案内しましょう。こちらはれっきとした法務省矯正局札幌矯正管区に属する刑務所です。数年前、刑務所にお願いして所内見学に寄せていただきました。

写真はイメージです(こちらは博物館「網走監獄」の入り口の様子)

 この施設、日本最北端の地にあります。総面積は1640ヘクタールの日本一広大な敷地を有しています。作業では耕種農業のほか、日本唯一の畜産及び林業を営む刑務所です。

 私にしても映画のイメージが強いもので、担当部長に「この刑務所、収容者は極悪、環境も最悪みたいに言われますが、実際はどんなですか?」と聞きますと、「受刑者の属性でいうと『B』ですので、犯罪傾向の進んでいる収容者だらけです」と説明を受けました。収容分類級「B」とは再犯者・暴力団構成員で執行刑期10年以下の人たちです。少し調べると半数が覚醒剤取締法違反者でした。

 作業場である工場をいくつか見せていただきましたが、心に残ったのは風呂場でした。他所(よそ)の刑務所とは少し様子が違います。

風呂場は全身アート系の人ばかり

 他所の風呂場はほとんどが中央に長細い浴槽があり、その左右に洗い場があり、整列して奥まで進み、かけ湯の後、浴槽に浸かって、洗髪洗体して、改めて浴槽に浸かって、アッという間の15分で終了です。風呂場の奥に青・黄・赤の電光掲示板で時間の経過を知らせてくれるのですが、せわしなさそうです。ちなみに入浴は夏は週に3回、冬は2回とおおよそ決められています。