「釈放前指導導入教育員」として、仮釈放や満期釈放で出所する前の受刑者たちに「社会復帰プログラム」の授業を行っている、元吉本興業専務の竹中功氏。
ここでは、そんな竹中氏が、全国の刑務所で続けている釈放前教育の実体験をもとに書き下ろした『それでは釈放前教育を始めます! 10年100回通い詰めた全国刑務所ワチャワチャ訪問記』(KADOKAWA)から一部を抜粋。竹中氏が網走刑務所を見学した際のエピソードを紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)
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国内で一番名前が知られている刑務所は「網走刑務所」
読者の皆さんの地元に刑務所があれば、興味もあって、どういった罪名の人が何人ぐらい収容されているかを知っている人もおられるでしょうし、知り合いが中にでもおられたら刑務所情報も集められているのではないかと思います。
一方でほとんど刑務所に興味がない、接点もない方も読者のなかにはいると思いますが、そんな人にとっても名前だけはよく知っている刑務所と言えば、あの国内ナンバーワン人気の「網走刑務所」ですよね。あれだけブランディングができている刑事施設は他にはないでしょう。中の様子をよく知らない人でも「収容されるなら網走は勘弁してほしい」とか「寒さと厳しい労役」などとイメージされていると思います。
そのご存じの理由を察すると、まず「健さんが出ていた映画」ということからではないでしょうか。その作品とは東映映画作品「網走番外地」であります。刑務所の実際の住所は「〒093-0088 北海道網走市字三眺官有無番地」ですが、製作の都合で「番外地」と付けられたのでしょう。そもそも「番外地」とは土地公簿で番地の付いていない土地を指すもので「番地さえ付けられない特別なエリア」という意味ではあの映画にぴったりです。ただ実際は無番地でした。
刑務所で見てほしい映画
第1作目「網走番外地」は巨匠、石井輝男監督による1965年製作のモノクロ作品。高倉健演じる橘真一と南原宏治演じる権田権三とが列車から共に雪の原野に飛び降り、脱走を図るというものです。
東映では1965年以降、シリーズ化されました。予告編のテロップには「俺は自由が欲しい」。この作品には、丹波哲郎、待田京介、嵐寛寿郎、田中邦衛、潮健児、安部徹らが出演。今の芸能界のシュッとした男前だらけの時代ではキャスティング不可能かと言わしめる面構えです。時代で言うと「仁義なき戦い」シリーズ開始前夜の東映の顔役が並んでいました。