阪神タイガース、千葉ロッテマリーンズで活躍した元プロ野球選手の鳥谷敬氏。彼は、「人がしていないことにこそ価値が生まれる」という思いを抱きながら、18年にわたるプロ野球人生を送ったという。
ここでは、そんな鳥谷氏が現役時代のエピソードを踏まえながら、独自の「人生訓」を綴った『他人の期待には応えなくていい』(KADOKAWA)より一部を抜粋。鳥谷氏が考える“大谷翔平の素晴らしさ”について紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
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大谷翔平選手が人々を魅了する理由
ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手の活躍が話題となって久しい。
アメリカ・メジャーリーグという世界最高峰の大舞台で、投手として、そして打者として、いわゆる「二刀流」で見事なまでに結果を残している。
世界中の野球ファンを魅了するのも当然のことだろう。
彼が人々を魅了する理由は、「誰もできなかったことを実践している」という点にある。
多くの評論家が、「絶対に無理だ」「どちらかに絞らないとどちらもダメになる」「二兎を追う者は一兎をも得ず」と反対しているなかで、それでも自分の意思を貫き通した姿に快哉を叫んだ人も多いことだろう。
大谷選手の素晴らしさは、他人になんといわれようとも、自分の信念を曲げなかった点にある。
そもそも、プロ野球に進むほとんどの選手は、アマチュア時代に投手としても打者としてもチームの中心的存在であり、「二刀流」だった選手も多いはずだ。
しかし、レベルが上がるにつれて、「投手か、それとも野手か?」という二者択一を迫られ、そのどちらかに専念することになる。
わたしも、聖望学園高校時代は遊撃手兼投手として甲子園に出場している。しかし、早稲田大学に進学した時点で投手をやめ、正遊撃手として試合に出場することになった。
当時のわたしは、そこになんの疑問も抱かなかった。