――「子どもたちを耕す」という言葉がありましたが、よく使うフレーズですか?
のぶ 何か事件が起きた時にする「マイナスの生徒指導」があります。先生が怒ったり、保護者を呼んで対応したりするようなものです。教師をしていない人が思い浮かぶものです。しかし、それは後手です。
一方、事件が起こらないように何かを仕込んでおくのが「プラスの生徒指導」です。夏休み前に注意をするなど、普段の学校生活の中で子どもたちに意識を持たせます。
いじめを例に挙げますと、いじめが起こりやすい空気、いじめが起きる瞬間などで、どういう関わり方をすれば、いじめが起こらないのか。それをクラスで話し合って、みんなで決めていくということですね。学校が子どもにとって苦しい場所でなければいい。あとは、個々の力に応じて、力を伸ばしてあげたい。授業に限ったことではないですが、クラス内で活躍させてあげたい。
いじめ対応の基本は人間関係の構築
――いろんな情報を発信していますが、いじめのことが多いですね。
のぶ 国の調査(「いじめ追跡調査2010―2012」、国立教育政策研究所)で、小学4年生から中学3年生までの6年間で、いじめにあったことがある子ども、いじめに関わったことがある子どもは、ともに9割に及んでいます。いじめはほぼみんなが経験しているのです。加害者対応についても発信していましたが、生徒指導の基本は先出し。事件が起きたときに「後からこうします」って言われると、急に言われたほうが不利になると思うし、「なんで?」って反発にあいます。いじめの加害者対応も同様です。
いじめが起きてから「あなたは問題を起こしたから別室ね」って言われたら、「聞いてねぇぞ!」「なんで俺だけ?」ってなります。だからこそ、学級開きの最初に言わないといけない。保護者にも言わないといけない。そこを逃すとあとは全部、後手になります。いじめの対応は足並みを揃えるのが一番大事です。ただ、いじめをどこまで学校としてピックアップしていくか、生徒指導を中心に据えるかは学校によって温度差があります。
――学校によって、いじめへの取り組みがそこまで違うものですか?
のぶ 私の場合、幸い、最初に赴任した学校と次に異動をした学校で、教育観ができました。そのどちらも、特にいじめに特化して生徒指導を組み立てるという先生、いわばスペシャルな先生がいました。3校目はそうした先生がいませんでした。
すべての問題の根本として言えるのは、落ち着いて生活ができるところで問題を起こさないということ。その関係が築けないと、みんな好き勝手やっていますし、お互いに気を遣えない。他人をからかっていじめが起きます。人間関係ができなければ、授業もうまくいきません。すべての中心は人間関係。そこを重視して取り組める人は少ないです。
ただ、3校目は、うまく教員として生徒の人間関係に介入できました。当時、私は20代でした。学校内では最年少。動きが悪い先生が多いと学校は荒れてしまいます。しかし、私が赴任したときには、教職員が半分以上入れ替わっていました。前年度は大荒れで、みんな嫌がったのか、やめてしまったのかな、と思います。そのため、新任で若い教職員ばかりでした。そのため、主要なポジションにつけてもらえました。ラッキーでしたね。