この日はコンクリートの建屋で映画の撮影が行われていたため、邪魔にならないようにタイミングをうかがいながら関係者にご挨拶した。
映画は『映画(窒息)』というタイトルで、全編を通してセリフや文字情報が一切無い。ラブストーリー、サスペンス、アクションといったあらゆるジャンルを自由に縦断しており、極めて挑戦的な映画といえるだろう。撮影現場ではそんな内容の映画とは知る由もなかったが、私としても非常に気になる作品だ。現在、公開に向けて準備が進められており、クラウドファンディング も実施されているので、ぜひチェックしてほしい。
監督の長尾元さん、主演の和田光沙さんにもご挨拶したのち、さらに山の上を目指す。この遊園地で最上部と思われる広場に到着すると、大きな岩を囲むようにして道路が造られていた。かつて、子供たちが運転するゴーカートが走っていた場所だ。
閉園から20年ほどしか経っていないというのに草木が伸び放題で、歩くこともままならない。
管理人小屋に残された“手紙”
藪こぎしながら周囲を一回りすると、当時の遊具も発見した。象の形をした乗り物だが、とても愛嬌がある。草木に埋もれてしまった遊具を眺めながら、子供たちの歓声がこだましていたであろう当時の姿に想いを馳せる。目の前にある廃墟化した遊具に視線を戻し、その落差に哀愁を感じる。この時間こそが、至福のひとときだ。
廃墟には、様々な魅力がある。見た目の廃退的な美しさから廃墟写真集が人気だが、そのほかにも、通常では見ることができない風景と出会えたり、現役だった当時の様子を想像することも、廃墟でしか味わえない大きな魅力だろう。
ゴーカートの周辺には、売店や茶室などの建物が幾つか見える。全体的に地味でちぐはぐな印象は拭えないが、随所にこだわりが感じられる。建物の1つ、管理人小屋に入った。
私は廃墟を探索する際、外観の鑑賞はもちろんのこと、落ちている書類のチェックも欠かさない。それは、現役当時の姿や、廃墟になってしまった理由を知る手がかりが得られるからだ。手がかりがあれば想像がはかどるし、推理していた内容の答え合わせができると、さらに楽しめる。
すると、管理人小屋に雑然と置かれた箱の中から大量の手紙とカセットテープが出てきた。“貴様を千回叩き殺しても俺の気持が治まらぬ”と記された手紙は誰に宛てられたものなのか。そして、カセットテープにはどんな音声が記録されていたのか……。
写真=鹿取茂雄
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。