国道は日本で最上級の道路であり、交通量が多く整備が行き届いた立派な道路とイメージする人が多いだろう。しかし、そのイメージとは裏腹に、道幅が狭く、舗装は剥がれ、路面には無数の落石が転がっているという国道も存在する。私はそんな酷い状態の国道に魅力を感じて全国を巡り、親しみを込めて“酷道”と呼んでいる。
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関西最上級と評される酷道
大阪市と奈良市を最短距離で結ぶ国道308号。この路線にも、酷道区間が存在している。
大阪府と奈良県の間には生駒山地が立ちはだかるが、国道308号のバイパスである第二阪奈道路を経由すれば、阪奈トンネルであっという間に通過できる。
しかし、本来の国道、いわゆる下道の国道308号はというと、生駒山地の上を越えてゆく。関西最上級と評される酷道、暗峠(くらがりとうげ)だ。
暗峠では、現在の法令により認められている最大勾配をはるかに上回る激しい坂道が待ち構えている。一昔前の軽自動車では登れないと言われていたほどだ。
また、峠の頂上付近は江戸時代から続く石畳になっている。国道308号は、道の酷さや険しさだけではなく、歴史や人々の暮らしにも触れられる素敵な酷道なのだ。
それでは早速、大阪側から暗峠に挑んでみよう。
東大阪市の市街地から奈良方面に走っていくと、巨大な生駒山地を目前に、近鉄奈良線のガード下をくぐったあたりから、道の様子がおかしくなる。
道幅があまりに狭いため、直進方向は進入禁止で、奈良県側からの一方通行になっているのだ。
そのため、奈良県方面へは、北に大きく迂回するようなルートが指定されている。