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車がひっくり返ってしまうのではないかと恐怖を感じる坂道
一昔前までは、“コンパクトカーや軽自動車に2人以上が乗っていると、暗峠を登れない”とまで言われていた。自動車の性能が向上しているので現在は上ることができるが、たしかに車がひっくり返ってしまうのではないかと恐怖を感じるほどの坂道だ。
カーブの内側は特に傾斜がきつくなっているので、地元の慣れた車は進行方向に関わらず、カーブの外側を通過してゆく。
車を降りて坂道に立つと、その急坂を肌身で感じられる。前傾姿勢にならないと真っ直ぐに立てず、わずかな距離を歩いて登るだけで、息が切れる。麓から歩いてきたハイカーたちは、冬場でも汗だくになっている。
急坂を上り続け、峠に近づいてくると、集落が現れる。こんな場所に民家があることに思わず驚く。
県境の暗峠付近に到達すると、路面は石畳になった。とても風情があるが、ガタガタして非常に走りにくい。特にバイクは大変だろうなと思っていると、ちょうど目の前で原付がマシントラブルに見舞われていた。場所が場所だけに、無事を祈るしかない。
日本全国の国道を見渡しても、自動車道が石畳になっているのは非常に珍しく、おそらく全国で唯一だろう。
そんな国道308号暗峠のルーツは古く、奈良時代にまで遡る。
平城京と難波を結んでいた暗越奈良街道を踏襲しており、当時から阪奈間を最短距離で結ぶルートとして、物流や文化交流において重要な街道だったのだ。