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元ヤクルト名物応援団員が考えた、果たして僕らの声援は120m先の打者に届いているのか?

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/05/02
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果たして120m先の打者に声援は届いているのか?

 私たちの120m先にいる選手がバッターボックスに入る。ピッチャーと対峙して集中する。集中しなきゃ150km/hで飛んでくる直径8cmにも満たない物体を、木の棒で120mも飛ばすことはできない。周りの音が聞こえなくなるくらい凄く集中する。

 あれ? 音が聞こえない? じゃあ届いても声援は聞こえないんじゃないか?

 もし、聞こえていないとしたら、僕らは誰に、何のために声を出しているんだろう?

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 そんなことに気づいて、悶々とした時期もありました。

 ファンが声を出すというのは、「ファンがいることで選手に心強く思ってもらって、そのことが選手の後押しになってほしい」から「ファンがここにいることに気づいてほしい」という叫びにも似たメッセージで、突き詰めて言えば、決して自分のためではなく「選手に喜んでほしい!」ということではないでしょうか。

 じゃあ、選手が喜ぶ時はいつだろうか。

 頭の中で打席に入ってから終わるまでを思い返してみると、打席に入って打つ前に喜んでる選手はいないと思うのですが(いたらごめんなさい)、ヒットを打って塁上で一息つくとき。ホームランを打ってダイヤモンドを回るとき。そういうときじゃないかなと思います。

 我に返って、盛り上がっているスタンドを見る。ファンの喜んでいる声と姿に気づいてスタンドを見る(その時、スワローズなら綺麗な傘が舞っているかもしれない)。そしてヒーローインタビューで歓喜に沸くスタンド。その光景に選手が喜んでくれれば、ファン冥利に尽きる。

 選手が喜ぶ瞬間と空間を作り出す準備、たとえ声が120m先まで届かなくても、それぞれが精一杯の熱意を出してスタジアムの雰囲気を作る。それが声出し応援の意味なのかもしれません。

すべてのプロ野球ファンと選手が一体となる空間を作ろう

 やっと復活した声出し応援です。スワローズファンだけではなく、すべてのプロ野球ファンの皆さんが、選手と一体となれるような素敵な空間をいつまでも作り出してもらえればと願ってやみません。

 さて、そんなことを書いていたら、まもなく試合が始まります。

 ライトスタンドには見渡す限り連敗脱出を目指してファンが集まっています。

 お客さんの前に立ったとき、ファンの皆さんの勢いと目の輝きで「あ、今日は勝てるな、勝つ雰囲気を作れるな」って感じるときがあるのですが、きっと今日は大丈夫。

(というか、いま私はそんな目が出来ているのだろうか)

 さあ、行こうか。

 連敗脱出を目指して、32年ぶりのライトスタンド応援、頑張ってきます!

 

◆ ◆ ◆

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