ジャニーズのタレントも人の子ですから、タレントと同じ数だけ「ジャニーズの親」や「ジャニーズの保護者」という人がいることになります。息子をジャニーズ事務所に入れようとした経験があるDさんは、「私も“共犯者”かもしれませんね」と言いました。
「以前、息子の写真をジャニーズに送ったことがあるんです。それも、2回。親の贔屓目でしょうけど、息子は容姿が悪くなくて“ジャニーズに入れそう”と言われていました。応募のきっかけはパート仲間の息子さんがジャニーズに入ったことで、うちの子だって……と対抗心が燃えて心がざわざわしました。それでいやがる息子をなだめて写真を送りましたが、結局なしのつぶてでした。
いま思えば通らなくて本当に良かったのですが、あのとき私が親の見栄や欲望のために子どもを従わせようとしたことは確かです。愚かだと思われるでしょうけど“うちの子はジャニーさんが認めた美少年なのよ!”っていうステイタスに憧れていたんですね。どんな環境に息子を送り出そうとしているのか深く考えてはいませんでした。今回のことで、はっと目が覚めたように思います」(Dさん)
確かに私も、友人や知人の可愛い息子さんを見て「ジャニーズに入れそう!」と言ったことがあります。また「ジャニーズファンの友だちがうちの子を見て“ジャニーさんの好きなタイプかもよ?”って言ってくれたの」と、嬉しげに話す人もたくさん見てきました。“美少年という誉れ”に幻惑されて、そこに潜むものを直視してこなかったのは、ジャニーズを取り巻く人々が省みるべき点でしょう。
「わざと企業価値を毀損しようとしているのかとさえ思う」
オカモト氏の記者会見以降、これまでジャニーズに関心が薄かった層にも問題は認知されています。妻と娘がジャニーズファンだというある男性は「わざと企業価値を毀損しようとしているのかとさえ思う」と言います。
「私から見ると、企業経営の観点から見ても“このままじゃまずいだろう”としか思えません。経営側の価値観がまったくアップデートされていないように見えるし、本気でこのまま乗り切れると思っていたのでしょうか。ジャニーズについて違和感があったのは、30代、40代のタレントまでジャニー氏のことを“社長”ではなく“ジャニーさん、ジャニーさん”と呼んでいること。そういうところからも、神格化された存在として特別扱いすべき、みたいな空気が醸成されていった気がします」(Eさん)
Eさんの指摘のとおり、ジャニー氏は身内からも“特別な、やんごとなき存在”として扱われ、私たちファンもなんとなく“そういうもんだ”と受け入れてきました。今なら「ほとんどパワハラでは?」と言われそうな彼の“鶴の一声”が、絶対服従の魔力をもってまかり通っていたことも事実です。
たとえばジャニー氏に「バク転できる?」と訊かれ、「できないと答えたらステージに出られなくなるので、できないけど“できる!”と言いました」というエピソードを語るタレントさんは少なくありません。
タレント側が自由に回答できないとすれば、「ユー、やっちゃいなよ!」にも激励以外の意味がにじんでしまいます。
私たち自身も、笑いながら聞き流してきたことに向き合わなくてはなりません。
「今のままでは、ジャニーズのタレントさんが賞を取っても正当に評価されなくなってしまう」
最後に登場するFさんは、自身もマスコミで働き、「ジャニーズにはさっさとこの問題を清算して、呪いを解いてほしい」と悲痛に訴えました。
「以前、ジャニーズを辞めたグループが別事務所からデビューした時に、“波風立てたくないから、うちでは彼らを扱うのはやめておこう”という判断になりました。彼らがジャニーズ時代にはさんざんお世話になったのに、事務所を出たら無視するのはおかしいと思っても、ヒラ社員が異論を唱えたところで何も動かないのが現状です。そんなことを続けていたら、ジャニーズのタレントさんが賞を取っても正当に評価されづらいんです。本当に頑張っている人だってたくさんいるのに……。
私は自分がジャニーズのファンだから、余計にもどかしいんです。マスコミの報道を封じたままで“感動のチャリティー番組”なんてやってもそらぞらしいだけ。その前に、まずは自分自身の問題に切り込むことが先決でしょう。そうでないと、本気でがんばっているタレントさんたちまで『この人たち、あの問題をガン無視して歌ったり踊ったりしてるの?』って眉をひそめられてしまう……。そう思うとたまりません。今回の件がきちんと裁かれたところで、ファンは離れません。ダンマリを決め込んだほうがむしろ幻滅につながります。もっとファンを信じてほしいです」(Fさん)
ジャニーズのファンアカウントでは沈黙を貫いていても、内心でFさんの叫びに共感するジャニーズファンは、決して少なくないと思います。私も同感です。