2023年4月。東京・帝国劇場では今、堂本光一さん主演の舞台「Endless SHOCK」(本編)及び「Endless SHOCK -Eternal-」(スピンオフ)が上演されています。
コロナ禍で度々中止を余儀なくされ、本編は実に3年ぶりの上演となる同舞台。場内は期待に胸膨らませた観客で満ち、「ああ楽しみ! またパワーをもらえるわ」などと興奮ぎみに話す声がそこかしこから聞こえます。
やがて開演時間となり、スクリーンにその名が映し出されると、客席から恭しい拍手が起こりました。
Eternal Producer JOHNNY H.KITAGAWA
故・ジャニー喜多川氏がプロデュースを手がけた作品には、今もすべて彼の名が“Eternal Producer”としてクレジットされています。
ゆるやかに手を叩きながら、しかし私はやるせない思いが胸を染めるのを禁じ得ませんでした。
元ジャニーズJr.のオカモト・カウアンさんによる「ジャニー氏から性的被害を受けてきた」という告発は、大いなる衝撃をもって世界中を駆け巡りました。
これに先がけてBBCワールドニュースではジャニー氏の性加害に迫るドキュメンタリー「Predator:The Secret Scandal of J-Pop(J-POPの捕食者~秘められたスキャンダル)」が放送され、署名サイトchange.orgでも「ジャニー喜多川氏の性犯罪疑惑を報道しない理由をマスコミに問い、ジャニーズ事務所に謝罪を求めます!」というキャンペーンが始まりました。
こうした動きを受け、たとえかそけき“いちファン”だろうと、「そんなの知らない」とやり過ごすことはもはやできなくなりました。
「知らないも何も、断罪一択でしょう」と言われたらそうなのですが、歯切れ悪く口ごもるファンも少なくありません。なぜなら、この問題に毅然と向き合うことは、愛する自担(推し)はおろか、自分自身をも道連れにすることになるからです。
複雑に絡み合った毛糸玉を手に、迷宮に放り出されたファンたちに本件への思いを訊きました。
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「性加害はもちろんよくない。でも自担をおびやかすことはしたくない」
最初に登場するAさんは、「性加害の疑惑が事実なら、再発防止策は徹底してほしい。けれど、今現役のタレントさんたちを不安にさせるようなことは、絶対にしないでほしいです」といういわゆる“穏健派”の1人。問題には対処して欲しいけれど戸惑いも大きい、という揺れる心境を話してくれました。
「ジャニーさんの噂は知っていましたが、ちょっと強くハグしたとか甘噛みしたとか、そういう感じなんだろうなと思っていました。可愛すぎてつい、みたいな。
ファンならわかると思いますが、コンサートのMCでもテレビでも、タレントさんたちはジャニーさんがいかに偉大で愛にあふれた人だったか、合宿所での生活がどれほどおもしろかったか、ことあるごとに話してきました。
もし惨いことをされていたら、とてもあんなふうに語れないんじゃないかって。決して無理矢理言わされているようには思えないし、本当にジャニーさんを慕っていたんだと思っていました。
でも、オカモトさんのように告発する人が出てきて“ジャニーさんに好意を持つことさえ、巧妙なグルーミングによるものだ”って言われたら、自担はなんだかすごくかわいそうな子みたいになっちゃうじゃないですか。それがいたたまれないんです。
性加害がいいことだなんてもちろん思いません。ですけど、それを消化して今がんばっている自担をおびやかすようなことはしたくないし、してほしくないんです」(Aさん)