この関係者によると、ラーメン店を開業する前から湊興業は上納金の支払いもままならいほど「金欠」だったという。
「ずいぶん昔から湊興業が弘道会の会費を滞納しているという話はあった。組事務所を開いたときに貸し付けられた3000万円の返済も滞っていて、組長本人はヤクザとして生きていく気持ちがなかったのではないかとも。2020年に逮捕された事件では、受け取ったのも10万円。それもラーメン屋の調理器具を買うのに使ったと聞いている」
だが、辞めたいと言って「はい、そうですか」とはならないのがヤクザの世界でもある。この関係者が推測するのが、今回の事件が「落とし前」や「個別のトラブル」だった可能性だ。
「拳銃を使った殺しは重大だ。警察も本腰を入れて捜査をするし、実行役は捕まれば無期懲役もあり得る。組織の上にまで捜査の手は延びるだろうし、そんなリスクを背負ってまで狙うほどの標的でもない。犯人は金銭トラブルなどを抱えた、もっと短絡的な相手だったのではないか」
「20代くらいで全身黒ずくめの男が店に入って…」
実はこの店ではこれまでも、店の前に黒塗りの車が一日中停まっていたり、夜中に店に車が突っ込んだりすることがしばしばあったという。
「どう考えても警告や脅しの意味があると受け取れる。そんな嫌がらせの原因は、大抵の場合はカネだろう」
事件直前、現場では1人の男が店に入っていく様子が目撃されていたという。
「近くにいた人によると、店員の女性が戻ってくる前の午前10時半すぎ、20代くらいで全身黒ずくめの男が店に入って余嶋組長と話をしていました。黒の上下に黒の帽子までかぶり、開店前の店に入ったので不審に思っていたそうです」(前出の記者)
この男は5分ほどで店を後にし、防犯カメラにもその姿が映っていたという。一介のラーメン店主になりきれなかった男の最期を、100人態勢で捜査に当たっている警察は解明できるだろうか。
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