御年82歳。“ラジオ界のゴッドファーザー”と慕われるDJは、デビューから半世紀以上たった今もレギュラー番組を4本抱える売れっ子だ。衰えぬ情熱の源、社会現象を呼び起こした「スネークマンショー」、そして人気ミュージシャンと過ごした日々を振り返る。

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「しゃべり屋ではない」劣等感がずっとある

――克也さんは3月27日に82歳を迎えられました。おめでとうございます。

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小林 ありがとうございます。そもそも僕は広島の出身で、幼い頃からアメリカのラジオが好きで、上京して訛りを冷やかされた経験もあって英語を徹底的に学ぼうと思った。でも別に海外育ちじゃなかったし、何でも英語で考えるような習慣を努力で身につけたんですが、それが時々、ラジオでしゃべろうとすると邪魔になる場面もあったんです。「自分は生粋のしゃべり屋じゃない」。そんな劣等感がずっとあるからこそ、案外これだけ長く続けてこられたのかもしれないね。

©文藝春秋 撮影/石川啓次

――現在、ラジオでは4本のレギュラー番組を持たれていて。なかでも長寿番組の通称“ファンフラ”こと「FUNKY FRIDAY」(FM NACK5。毎週金曜日)は毎回9時間の生放送です。

小林 もう30年やっているらしいけど、昨日の放送が一番疲れたなぁ(※この取材は土曜日に実施)。「俺も歳なのかな?」と思ったよ。まあ歳なんだけどね(笑)。

©文藝春秋 撮影/石川啓次

――克也さんのディスクジョッキー(以下DJ)は曲のかけ方が個性的です。例えばファンフラのシングル曲トップ20では配信やCDリリースの有無といったリリース情報を交えた独自の分析で曲のチャート動向を紹介。2月に放送された「オールナイトニッポン55時間スペシャル」では洋楽の訳詞の朗読によって曲を紹介されていましたね。

小林 僕は曲を「誰々の何々です」とはほとんど紹介しないからね。かなり知られた曲ならタイトルを全く言わない場合もあります。例えば「さぁ、サザンオールスターズの『いとしのエリー』です」なんていうのは最悪。最近のラジオは文字情報も表示されるし、気になれば皆さん自分で調べちゃうんだから。むしろ「何だこの曲?」と気にしてもらえるほうが成功です。いかに“普通じゃない”“新しい”紹介の場をアレンジするか。そこがDJの腕の見せ所でね。