1ページ目から読む
2/3ページ目

「イケてる」アイテムなのに安価

 デジタルネイティブたるZ世代に人気なのが、今よりも不便な時代へのノスタルジーを掻き立てるアイテムだ。その筆頭が「Y2K」、1990年代後半から2000年代前半の文化。日本でルーズソックスなどのコギャル文化が再燃しているのもこの潮流の一環とされている。

©getty

 なかでも、人と会えなくなったコロナ禍、アメリカで熱を帯びたのが「ほんもの」志向のレトロヴィンテージ。たとえば、どんな曲を聴いたか他人にわかってしまうSpotifyよりもレコードやCDのほうが、一人で音楽とつながる「ほんもの」感があるとして、SNS映えしやすいとされた。

 こうして、オシャレアイテムとして有線イヤホンに白羽の矢が立った。懐かしさをもたらすEarPodsは、ガツガツ感とは対極に、シンプルで気だるい「ほんもの」な雰囲気を醸すことができる。無線タイプよりも他人から気づかれやすいため、世間話を拒絶する「話しかけるな」オーラを出せることもクールとされた。

ADVERTISEMENT

©getty

 なにより、EarPodsは安かった。今でも販売中で3,000円程度だから、中高生にも手が出しやすい。ヴィトンやプラダなどの高額ブランド品と違って、安価な「イケてるアイテム」だったから急速に広まった面は大きいだろう。

新ブームの登場で、有線イヤホンの流行は終了か

 大人たちを驚かせた有線イヤホンブームだが、より重要なのは、後日談かもしれない。Appleの逆襲ともいうべき新ブームが巻き起こったのだ。

 通勤の機会も増えた2022年に入り、今度は同社の最新無線ヘッドホン、AirPods Maxが「ホットガール(アツい女子)のアイテム」として祭りあげられたのである。

 K-POPスターからEarPods流行の始祖ベラ・ハディッドまで、人気芸能人たちがこぞって着用し、パッケージを開封するだけのTikTok動画に200万ごえのいいねがつくほどの熱気が形成された。これにより、有線イヤホンの天下は終了してしまったといえるだろう。