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一大ブランド化した「花とゆめ」。一方で男性マンガは…

「花とゆめ」は、グループ会社でもある集英社のバックアップもあって発行部数23万部と好発進。一時期は苦戦もありましたが、「ガラスの仮面」や「スケバン刑事(デカ)」などの大ヒット作を生み出し、「花とゆめ」ブランドは少女マンガの代名詞の一つとなっていきました。

 こうして女性向けマンガ誌の分野で足場を固めた白泉社は、1980年代に男性マンガ誌を作るべく奮闘しますが、当時は「週刊少年ジャンプ」が爆発的に大きくなっていく時代。創刊された白泉社の少年・男性誌は3度も休刊に追い込まれます。

 諦めの声も出る中で、めげなかったのが2代目社長の小長井さん。こうして4度目の挑戦として1992年5月に創刊されたのが、「ヤングアニマル」でした。

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 とはいえ最初は苦戦続き。社内から相当厳しい意見が飛び交かったそうですが、「ベルセルク」と「ふたりエッチ」という大ヒット作が生まれると風向きは変わっていきました。その後も「藍より青し」「エアマスター」「デトロイト・メタル・シティ」などのヒット作が次々と誕生。執念が実り、「4度目の正直」で成功したわけです。

「ベルセルク」
「藍より青し」

“グラビアのある青年誌”に留まらない作品の振れ幅はなぜ生まれるのか?

「ヤングアニマル」は“グラビアのある青年誌”です。同じような男性マンガ雑誌は基本的に、「セクシー&バイオレンス」の路線が主軸になります。実際、「ヤングアニマル」でいえば、セクシーと言えば「ふたりエッチ」でしょうし、バイオレンスは「ベルセルク」。実に“青年誌らしい作品”を看板連載で持っています。

「ふたりエッチ」

 しかし同誌では、他の青年マンガ誌で見られない大きな「振れ幅」があります。たとえば、王道の将棋マンガ「3月のライオン」であり、太平洋戦争をモデルに戦争の悲惨さを描き日本漫画家協会賞の優秀賞を受賞した「ペリリュー」です。

「信長の忍び」

 また、織田信長に仕える女忍者の活躍を描いたギャグマンガ「信長の忍び」も、ギャグに収まらず歴史の意外なトリビアがちりばめられた作品で、「自殺島」も単純なバイオレンスに留まらず、生死や狩猟といった命の在り方を描いています。