白泉社といえば、数多くの大ヒット作を生み出し、「花とゆめ」や「LaLa(ララ)」など少女マンガ誌を展開する有力出版社の一つとして知られています。その中でほぼ唯一の青年マンガ誌「ヤングアニマル」が、今年で創刊31周年を迎えます。

 王道路線の「3月のライオン」、重厚なダークファンタジーの「ベルセルク」、そして夫婦の性に切り込んだラブコメ「ふたりエッチ」など、多様なジャンルの作品が“共存”する「ヤングアニマル」。この幅の広いコミック誌は、どのように歩んできたのでしょうか。

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集英社から分かれてできた白泉社。きっかけは北海道の夜

 白泉社は、集英社から分社化する形で、第一次オイルショックの紙不足による混乱が起きていた1973年に設立されました。

 きっかけは、北海道登別で開かれた書店の感謝会。当時は集英社の社員だった梅村義直さん(「りぼん」編集長、後の白泉社初代社長)は、集英社の社長の陶山巌さんと同部屋になりました。

 社長と同部屋であることに何かあると思った梅村さん。その予感は正しく、夜になって二人で酒を飲んでいると、陶山さんに新出版社の設立を提案されたのだといいます。

 当時、集英社は大手に成長したものの、陶山さんは企業に無限の成長は難しく、適度な規模があると考えていました。また、出版社は「アイデア勝負」であるため、集英社という“母艦”はそのままに、そこから新たに優れた“飛行機”を飛ばそうと考え、梅村さんに白羽の矢を立てたのです。ちなみに、陶山さんも小学館から飛び出して集英社を設立、同社を大手にまで育てた経緯があります。

 梅村さんは、陶山さんの提案に心を打たれて、会社の設立を承諾。当時「別冊マーガレット」の編集長だった小長井信昌さんらを加え、得意の女性層をターゲットにしたマンガ誌「花とゆめ」を創刊します。