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東京駅コインロッカーで「生首発見」 犯人どころか、被害者の身元すら不明の“未解決事件”になった理由とは――2022年BEST5

東京駅コインロッカーで「生首発見」 犯人どころか、被害者の身元すら不明の“未解決事件”になった理由とは――2022年BEST5

2023/05/09

genre : ニュース, 社会

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2022年(1月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。事件部門の第3位は、こちら!(初公開日 2022年12月31日)。

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 2015年5月31日、「東京駅で生首発見」という一報が流れた。

 ところが、この時発見されたのは首だけではなかった。JR東京駅丸の内南口改札付近のコインロッカーに無施錠の状態で放置されていたキャリーバッグから、高齢女性の遺体が発見されたのだ。「東京駅コインロッカー内死体遺棄事件」である。

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 東京駅という大都市の中心で起きた事件だけに、当時、捜査に当たった捜査員らは、被害者の身元はすぐに判明して、犯人も割り出されると思っていたという。だが未だに犯人の影が掴めないどころか、被害者の身元すらわかっていない。なぜこの事件は未解決事件となっているのか。「遺棄された場所が“無施錠のコインロッカー”と“東京駅”だったことが、その謎を深めた」と、元捜査関係者T氏は語る。

※写真はイメージです ©iStock.com

キャリーバッグから発見されたのは腐敗した高齢女性の遺体

 キャリーバッグが発見されたのは、事件発覚より1か月以上も前にさかのぼる4月26日の午前9時40分頃。丸の内南口のコインロッカーの中に入れられていた黄色のキャリーバッグを、点検していた職員が発見。コインロッカーには鍵がかかっていなかったため、回収して駅構内にある一時保管庫に移した。

「通常、コインロッカーの利用期限は3日間。金を入れて鍵をかければ、3日間は開けられることはない。無施錠で荷物が置かれている場合、不正使用、不法投棄とみなされるため、中身を確認すべきだった。だが中身はチェックされなかった。それが犯人に幸いした」とT氏は語る。

 保管庫での保管期限は1か月。保管期限が過ぎ、中を確認するためバッグが開けられた。入っていたのは女性の遺体だった。身長140cmほどのやせ形。推定年齢70歳ほどの高齢女性が、縦73cm、横53cm、厚さ27cmの古いタイプのキャリーバッグに体を丸めた状態で押し込まれていた。遺体はカーディガンを羽織っていたが、すでに半分近くが腐敗していたという。

 だが腐敗臭はしなかった。

「本来あの臭いは独特で強烈だ。鼻についたら、鼻の穴に何度、石鹸を突っ込んで洗っても取れない。今でも何かの拍子に思い出すことがあるほどの臭いだが、この事件ではキャリーバッグがしっかり密閉されていたのか、保管庫が暗くて涼しかったのか……」(同前)

 司法解剖の結果、遺体に殺人と断定できる外傷はなかったが、殺人の可能性も否定できなかった。死因がわからなかったためだ。

「解剖の結果、刺されたり、殴られたり、首を絞められた痕跡は見つからなかった。毒物による殺害や、溺死でもない。ただ口を塞いだり、濡れたタオルを顔にかぶせて窒息させた可能性や餓死の可能性もある」(同前)

 キャリーバッグに押し込められたのがいつなのか、老女が健康だったのか寝たきりだったのか。

「寝たきりなら床ずれの痕などでわかるが、腐敗していたためそれもわからない。指紋すら採れなかった」(T氏)

 はっきり残っていたのは、一部が欠けているか入れ歯だった歯形だけだ。

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