1ページ目から読む
2/4ページ目

検査の結果、診断は「ステージ3」

 11月初旬、検査の結果を聞きに病院へ。やはり妻の腸閉塞は大腸がんによって引き起こされたもので、ステージは3。臓器への遠隔転移はないが、患部付近のリンパが腫れていた。

「たとえがんであっても初期であってくれ」という俺の淡い希望は木っ端微塵に。「3って……リンパが腫れてるって……」と頭がグラングランするなか、先生は「腹腔鏡手術でも大丈夫だろうけど、うちの病院って開腹手術しかできないんですけど……どうします?」と即答しにくい質問をしてきて、さらにグラつきが増す。

 あまりのグラングラン具合にボーッとなっていると「お子さんがいらっしゃると仰ってましたが、第二子がほしいとか考えておられます?」と聞かれた。

ADVERTISEMENT

「考えてます」
「考えてません」

 ふたり同時に反応したが、その答えがド反対だったので「エッ?!」と顔を見合わせた。

妻と息子

「第二子ほしかったのか……」と驚きつつ「なんだって先生は、こんな場面でそんなことを?」と戸惑う俺。

「第二子ほしくなかったのか……」と驚きつつ「その話、ついに来ましたか」となにやら覚悟する妻。

 夫婦の間に亀裂が走ったのを目の当たりにして、若干気まずそうにしつつ「妊孕性温存を考えたほうがいい」と続ける先生。

治療とともに考慮しなければならない「妊孕性温存」

「妊孕性温存」とは、抗がん剤や放射線治療といった妊娠する力を失わせる可能性のある治療を始める前に、正常な状態の卵子や精子を体から取り出して保存すること。

 まさかの場面で夫婦のすれ違いを感じたこともさることながら、どうしたって「死」のイメージがチラついてしまう“がん”と一般的にキラキラした「生」のイメージしか湧いてこない“妊娠”が結びつくこと、世代によっては治療とともにそうしたことも考慮しなければいけないことにも驚いた。

病院で手渡された「妊孕性温存」に関するパンフレット

 大腸にある腫瘍の摘出手術が行われるのは11月12日、抗がん剤治療が始まるのは翌年1月9日。抗がん剤が投与されたら妊孕性が失われてしまうわけで、妻の場合は温存の準備をするために動ける時間は腫瘍の摘出手術を終えてから1ヶ月半もない。その間に妻の卵巣から卵子を取り、受精卵を作って凍結するのだ。それも、たたでさえクソ忙しい年末年始のスケジュールの中で……。