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天才講談師・神田松之丞のビジョン「2年後には真打にさせろ!」

神田松之丞、語る【前編】

2018/02/18
note

真打昇進が否決されたことについて

――そういえば、またも落語芸術協会(芸協)の理事会で松之丞さんの真打昇進が否決されたという……。

松之丞 そういう噂も耳に入っているんですね(笑)。色々な噂がとびかってますけど、私は直接聞いてないので、まぁ、色々とありがたいなと。でもいつものように、提案はされて、全会一致で否決というのが、笑えるのでいいなぁと思いますね(笑)。誰かを抜かしたりする事は本望ではなくて、ただ、色々と思うことはありますけどね。このままだと真打昇進まで6年かかります。果たして、二ツ目のままでモチベーションを保てるかというと、なかなか難しいかもしれません。私も周りも。だから、もう言っちゃおうと思って。

©榎本麻美/文藝春秋

――何をですか?

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松之丞 2年後に真打にさせろ(笑)。

――いいですね、自分から仕掛けていく感じ(笑)。

松之丞 もちろん、演芸の世界では「そんなことは口に出すもんじゃないよ」ってみんなが思っていることは重々承知してますし、自分も口に出すのは野暮だとは分かってます。でも、こうやって自分から花火を打ち上げていくのもキャラとしてはいいかな、なんでもありだなと。

――芸協の某師匠は、抜擢には反対してきましたね。

松之丞 誰ですか? 某って?(笑)。 反対するのも優しさで、いずれにしろ若手のことを思っているのは皆さん間違いないです。「二ツ目のうちにうんと恥をかいておいた方がいいんだよ」とおっしゃいます。それは圧倒的な正解ですし。たぶん、その某師匠はかつて抜かれた経験があって、抜いた方と抜かれた方、その両方の苦労をご存知だと思うんです。自分としても、二ツ目の居心地の良さは分かってるんですが、こういう風に言い出す若手がいるのもアリなんじゃないかと思って。エンターテインメントなんで。

――芸協の中でも、考え方は十人十色ですね。

最近の歌丸師匠の執念はすごい

©橘蓮二

松之丞 芸術協会には色々な師匠方がおりますが、最近の(桂)歌丸師匠には鬼気迫るものを感じます。

――体調が悪いのに、仕事に対する熱意は衰えませんね。

松之丞 歌丸師匠は、『笑点』に出演して、日本全国に知らない人はいないほどの有名人になった。つまり、タレントとして頂点を極めた。それなのに81歳になった今も、落語家としての頂点を目指している。これ、両方の山を極めようとするのは、常人では無理です。時間が足りませんから。でも、体調が悪くなった今も気力を振り絞って山を登ろうとしている。尋常じゃない。この執念はすごいな、と。ただただ感服するばかりです。