「私は地獄に堕ちるべき人間です」

 こう言って裁判長に深々とお辞儀をしたのは、人気ゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」などに数々の“神曲”を提供してきた人気作曲家の田中秀和被告(35)だ。昨年8月20日、夜の駐輪場で当時15歳だった女子高生に卑猥な言葉をかけたとして“迷惑行為防止条例違反”の罪に問われ、他にも盗撮11件や電車内で自慰行為に及んでいたことが発覚して起訴されていた。(#1#2を読む)

 田中被告が“懺悔”をしたのは4月28日に開かれた第2回公判でのことだ。この日は、被害に遭った女子高生Aさん(16)が自ら出廷し、「心情に関する意見陳述」を行った。証言台と傍聴席の間には遮蔽板が設けられたが、初公判と同じ濃紺のスーツに紺のネクタイ、白のワイシャツ姿の田中被告は、伏し目がちにAさんの言葉に耳を傾け、時折頷く場面もあった。

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かつて売れっ子作曲家だった田中被告

 公判終了直前、「どのような罰をもってしても許されない」などと述べた田中被告。だが、初公判から一貫して自責の念や謝罪の言葉、更生の意思を述べてはいるものの、その言葉とは裏腹に自身がAさんに及んだ一部の行為については否認を続けている。実際に、検察側が田中被告に「懲役1年6カ月」を求刑したのに対し、弁護人は「罰金刑が相当」と“極めて軽い”罰を主張した。

 果たして、田中被告は“罰金”さえ払えば自身の犯した罪は許されると考えているのだろうか。その態度からは本当に反省しているのかうかがい知ることはできない。人気作曲家の“罪と罰”――。当事者であるAさんに改めて心情を聴いた。

「お金をあげるからしてくれない」「僕のをシコシコして」

 事件が起きた8月20日。その日はあいにくの雨だったが、Aさんは友人と花火大会を楽しむために神宮外苑を訪れていた。Aさんが振り返る。

「この日は、帰りが夜遅くなることを許してもらえる、年に1、2回しかない特別な日でした。雨のなか、夜空いっぱいに打ち上げられた、色とりどりの花火を見ながら、とても楽しい時間を過ごしました。それなのに帰宅途中、自宅の最寄駅の駐輪場で田中被告に突然呼び止められ、すべてを台無しにされました」

第2回公判後に取材を受けたAさん ©️文藝春秋

 田中被告がAさんに声をかけたのは午後10時過ぎのこと。駐輪場は外灯こそあるものの、人気は少なく、場所によっては暗がりになっている。そんな暗闇で田中被告は未成年のAさんに「お金あげるからしてくれない」「僕のをシコシコして」と迫ったのである。