大谷翔平に喫した規格外の一撃が、野球への意識を変えた
結果がすべての世界。「不振」という言葉で片付ければそれまでだが、次代の投手陣の中心を担うことを期待される2人はそれぞれのアプローチや思考で“新境地”を目指し、もがき苦しみながら今に至っている。才木の分岐点は3月6日の侍ジャパンとの強化試合。先発マウンドに上がり、大谷翔平と2度対戦し1奪三振、1被弾だった。心を揺さぶられたのは、もはや説明不要のワールドクラスのスラッガーに浴びたホームラン。
「ベストボールでした。絶対に空振り三振だと思った。真っ直ぐでしっかりファウルを取って良い形で追い込んだ後に片手であそこまで打ち返されてしまったので」
渾身のウイニングショットだったフォークは、体勢を崩され左膝をついた大谷にバックスクリーンまで運ばれた。世界との「差」を痛感した24歳は「大谷さんに打たれて悔しかった。対戦をプラスにしたかった」とフォークの球速を上げるべく改良に着手。メジャーリーガーとの体格差も感じたため、中6日の調整期間にウエートトレーニングも加えた。試行錯誤した末に開幕には従来のフォークに戻したものの、小さくない挑戦。目先の結果に繋がらなくても、大谷から受けた刺激をすぐに行動に移せるのが背番号35の長所だ。
新フォームは一時封印 高みを目指し、2人で一軍の戦力に
浜地は昨季のシーズン途中から模索してきた新フォーム習得へオフには米国のトレーニング施設「ドライブラインベースボール」を訪問し、ヒントを得た。春季キャンプでもブルペンでボールを受けた坂本誠志郎から「たぶん、このフォームがハマればすごいまっすぐ(直球)が来ると思いますよ」と期待されていた。ただ、発展途上のフォームとあって、実戦で結果が伴わなかった。浜地としても決してポジションを約束された立場ではなく、3月に入ってからはアピールを優先しフォーム改造は一旦“中断”。「正直、自分的には悔しいですけどね」というのが、偽らざる本音だろう。
より高みを目指した先で、それぞれ小さな壁にぶつかった両腕。ただ、ここで立ち止まる2人でもない。先述の対談の最後に才木は「浜地が出てくるまで長いイニングを投げる」と言い、浜地も「才木の勝ち星を守る」とうなずいた。シーズンはまだ始まったばかりで、それぞれのキャリアも序章に過ぎない。才木―浜地のリレーにタイガースの未来が投影できる。
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