母の日に満塁弾を放った佐藤輝明の驚愕打球に思わず…
甲子園球場で“確信歩き”を披露できるバッターが、今の日本に何人いるでしょうか。
5月14日、母の日に行われたDeNA戦。ピンクのリストバンドと手袋を纏い、同じくピンクのバットを手に打席に立った“サトテル”こと佐藤輝明は、初回に先制の3ランを放つと、1点を勝ち越した直後の4回2死満塁の場面で三嶋一輝の投じた146キロ直球をバット一閃。
打球は信じられないスピードで、広い広い甲子園球場の右中間スタンドに飛び込んでいきました。
関東出身ながら小学生時代から阪神ファンの私ですが、阪神戦を見るとどうしても大きな声をあげ、感情を表に出してしまいます(負の感情も含めて)。そのため、家族の安穏を守る意味でも、原則として「自宅リビングでの阪神戦の観戦」は控えるようにしています。
この試合も仕事部屋のパソコン画面で観戦していましたが、サトテルの放った本塁打のあまりの衝撃に、ついつい「うぉっっ!!」と大きな声を出してしまいました。
そんなただならぬ気配を感じたのか、今年で10歳になる息子が「なに? なに?」と無邪気な笑顔で私のもとへやってきました。
「お父さんが応援している阪神タイガースの佐藤輝明選手が、すごいホームランを打ったんだよ」
そう告げると、息子はこう言いました。
「へー、大谷翔平と、どっちがすごい?」
子どもというのは、なんて残酷な質問をするのでしょうか。この世に、「大谷翔平よりすごい」と断言できる選手など、存在するわけがありません。ただ、野球ではなくバスケットボールに熱中する息子が知っている「やきゅうせんしゅ」はWBCで見た大谷と村上宗隆、ダルビッシュ有、ラーズ・ヌートバーくらい。父の言葉に、素朴な疑問を持つのも仕方ありません。
「……まぁ、それは……大谷のほうがすごいかな。でも、佐藤輝明もすごい選手なんだよ」
息子からの純粋かつ暴力的なクエスチョンに、サトテルの驚愕弾の興奮がちょっとだけ冷めてしまった自分を感じつつも言葉を振り絞った私に、息子は追い打ちをかけます。
「そうなんだ。じゃあ、もう少ししたら『めじゃーりーぐ』に行けるかもしれないね」
阪神ファン的にもかなりデリケートかつド直球な質問に、私は再び言葉を詰まらせてしまいました。とはいえ、FA権取得までの期間やポスティングシステムのことを息子に説明したところで「なにそれ、わからん」と一蹴されるのは火を見るよりも明らかです。
「うーん……行けるかもしれないね……」
こう、告げるのが精一杯でした。ただ、私の言葉をきっかけに隣で阪神戦を見始めた息子を視界の端でとらえながら、こうも考えました。「……このホームランだけに限れば、『大谷翔平と同じくらいすごい』と言ってもいいのでは?」