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どうすれば「サトテルはすごい!」と10歳の息子に伝えられるのか…

 ちょうど中継ではサトテルの満塁弾の飛距離が136メートルで、打球速度が171キロであったことを告げていました。

 仕事柄、大谷翔平のホームランの記事を書くことも多い私は、当然ながら彼の放ったホームランの打球速度や打球角度がある程度は頭に入っています。サトテルの残したこの数値は、大谷はもちろん、数多のメジャーリーガーと比較しても遜色ないものです。私は意を決して、息子に再び話しかけました。

「でも、このホームランは大谷と同じくらいすごいと思うよ」

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「え? そうなの? ヤバくない? じゃあこの選手、ホームラン何本くらい打つの?」

 またしても、痛いところを突かれました。サトテルのキャリアハイはプロ1年目に記録した24本。新人左打者のNPB記録保持者でもあり、その数字は立派ですが、2021年にMLBで46本塁打をかっ飛ばした大谷と比較してしまうと、さすがに分が悪い。父親として、息子に「嘘」を教えるわけにはいきません。ただ、ここまで来たら意地でも「サトテルはすごい!」ことを息子に伝えたい……。そこから私は、息子の質問をやんわりとスルーしながら、できるだけわかりやすく(それでいて具体的な数字は大谷と比較されるので避けながら)、サトテルのすごさを伝えようと試みました。

「大学からプロに入って、いきなり活躍しているんだよ」「甲子園はすごく広いんだけど、そこでもたくさんホームランを打っているんだよ」「体も大谷と同じくらい大きいんだよ(大谷193センチ、サトテル187センチなので少しだけサバ読みました)」

 まだ純粋な息子は、私の言葉を真剣に聞いてくれて、こう言いました。

「じゃあ、次のWBCでは大谷とサトテルが見たいな」

 同じポジションのサードには村上がいるとか、外野も吉田正尚、鈴木誠也、ヌートバーがいるとか、そんな“現実”は関係ありませんでした。父親として、息子がバスケットボールに熱中することへの不満は全くないけど、少しでも「野球」に興味を持ってくれたのがうれしかったんだと思います。

「お、いいね! 次のWBCは3年後だけど、一緒に行こう!」

 少しだけテンションの上がった父親の言葉に、息子は間髪入れずこう突っ込んできました。

「3年? 長っ!」

 3年後、息子は中学生になります。母の日に交わした父と子の約束が果たされるのかはわかりませんが、もし実現したらスタジアムでこう言いたいと思います。

「ほらな、サトテル、大谷と同じくらいすごい選手だろ?」

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