人生100年時代の到来により、シニア層の“生き方”や“働き方”に注目が集まっている。しかし、そうしたテーマについてはこれまで組織側の施策が中心となり、個人の働き方戦略は十分に議論されてこなかった面がある。それでは、シニアたちが活躍し、人生の新たなフェーズで充実した働き方を実現するためにはどのような思考が必要なのだろうか。

 ここでは、法政大学大学院政策創造研究科教授の石山恒貴氏による『定年前と定年後の働き方 サードエイジを生きる思考』(光文社新書)の一部を抜粋。八王子市市民活動支援センターでのボランティア活動を行っている筆者自身の経験から、シニアが活躍する市民活動の事例を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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八王子市市民活動支援センターの事例

 八王子市で、シニアの市民活動が盛んであることはたしかだろう。筆者自身も、八王子市市民活動支援センターのスタッフである籏野貞夫氏と堤直樹氏にご縁があり、地域活動を行っている方々向けのワークショップを複数回担当している。

 筆者は籏野氏とかつて同じ会社で勤務をしていて、2000年前後にキャリア支援施策を一緒に担当した。籏野氏は当時、本部長という立場であったが、その後、社内のキャリアアドバイザーというひとりのプレーヤーの立場に転身された。この時に中村龍太氏(編集部注:サイボウズの執行役員、自営農業と同時に、IT業界の様々な企業でも業務を行っている人物)と同様に、プレーヤー型という働き方への自己調整があったのではないかと筆者は想像している。

©AFLO

籏野氏と堤氏はプロボノ活動に注力してきた

 堤氏については民間企業を定年退職後、土地勘がなく知り合いもいない八王子に移住してきた。そこで、八王子になんとかなじみたいと手当たり次第に情報収集して、たどり着いたところが八王子市市民活動支援センターだったそうだ。そして2人とも、70代になった今でも第一線で活躍している。

 八王子市には、NPOをはじめとした数多くの市民団体がある。八王子市市民活動支援センターはそれらの団体のハブとなる施設であり、人・物・資金・情報発信などの面から市民団体運営基盤の強化の支援を行っている。