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市民団体とプロボノワーカーが高めあおうとする姿勢を持つことが重要

 全国各地で社会福祉協議会などが窓口となっている、このようなちょっとした生活支援の取り組みは多いと思う。問題は、こうした取り組みの周知がまだまだ足りないところにあるだろう。本来なら気軽な地域活動として参加したいシニアもいると思われるが、取り組みの存在が知られなければ参加者の増加につながらない。元本郷お助け隊に対する八王子市市民活動支援センターのプロボノでも、プロボノワーカーは取り組みを周知するチラシ作成に関わっていた。この事例では、プロボノでチラシを作り直す過程で、元本郷お助け隊自身が活動のあり方を考え直すきっかけになったということだった。そうした意味では、意義深いプロボノ事例であったといえよう。

 ワールドカフェにおいても、市民活動やプロボノをいかに周知するかという点が議論の中心となった。市民活動やプロボノをする人たち自身は楽しんでやっていて、充実感もある。さらに、市民活動やプロボノに潜在的に関心があるシニアも多いようだ。ところがうまく周知がなされない、あるいはちょっとお試しできる仕組みがないため、参加者の広がりがないという点が一番の課題であることが浮き彫りになった。

 なお、堤氏はプロボノをただ広げればいいというものではなく、市民団体とプロボノワーカーがプロボノの意義・理念を理解しつつ、双方が高めあおうとする姿勢を持つことが重要だと感じている。こうした点も含めて、ワールドカフェの議論で参加者はそれぞれ、プロボノに関する総合的な取り組みの必要性への理解を深めたと思われる。

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越境学習に取り組む人々の対話は様々な気づきをもたらす

 議論の中で筆者が印象的だったのは、市民活動やプロボノにおけるメンバーの入れ替わり、継承の問題である。市民活動では地域の身近な課題に、有益な取り組みをしている。ただそれだけに、各団体は小規模で、中心メンバーが引退してしまうと継承できずに活動が消滅してしまうことがある。この問題に対してワールドカフェで出た意見は、継承しなくてもいいじゃないか、ということだった。団体の継承自体を目的とする必要はない。たとえばシニアの中でも、これから活動に取り組む若い新しい世代が、自分の好きなように地域活動をすればいいというのだ。そうであれば、プロボノにおいても団体の継承支援ではなく、団体の立ち上げ支援に注力すればいいという意見だった。

 この意見には、筆者は目からうろこが落ちた思いだった。情熱をもって地域活動に取り組んでいるシニアが、その継承にこだわらないという柔軟な考えを持っていたのだ。そうなると、新しく地域活動を考えるシニアは、より自分にとっての意義ある目的に合わせた活動ができる可能性が広がるかもしれない。地域活動のような越境学習に取り組む人々の対話は様々な気づきをもたらすという点で、やはり価値があると感じた出来事だった。