2人が指摘する、プロボノは多世代が対等な立場で発言し、そのような刺激でコミュニケーションスキル、コンセプチュアル(概念化)スキルが醸成されるという点。これはPEDAL行動(編集部注:組織内で活躍しているミドル・シニアがとっている5つの行動[Proactive/まずやってみる、Explore/仕事を意味づける、Diversity/年下とうまくやる、Associate/居場所をつくる、Learn/学びを活かす]を示す語)のDiversity(年下とうまくやる)とAssociate(居場所をつくる)によって、シニアが年齢・地位・役職の上下にこだわらないコミュニケーションができるようになることに、ぴたりとあてはまるだろう。
八王子でのワールドカフェ
2022年10月21日に、筆者は籏野氏と堤氏と連携して、八王子市の市民団体の関係者向けに、プロボノについて考えるワールドカフェを行った。ワールドカフェとは、カフェのような雰囲気をつくり、忌憚なく参加者同士が意見交換できるワークショップの実施形式のことだ。
まず筆者の印象に残ったのは、ワールドカフェに先だって行われたプロボノの事例紹介だった。元本郷お助け隊のチラシ作成支援の事例である。元本郷お助け隊とは、八王子市元本郷町で、その地域に住むシニア(主に一人暮らし)のちょっとした困りごとに対応している市民団体(社会福祉法人武蔵野会が母体)である。たとえば目覚まし時計の乾電池を交換する、鍵をなくして家に入れなくなってしまった人の世話をする、など業者などには頼みにくい些細な困りごとが対象となる。5分100円などの低価格の報酬を設定することで、気楽にシニアが支援を依頼できる工夫もしている。
事例発表を聞いていて、筆者はこうした取り組みの長所は、支援・被支援という立場の差がないところにあると感じた。お助け隊のメンバーが困りごとに対応すると、そのメンバー自身が依頼者にお礼されることで喜びを感じ、役に立ったという実感を得ることができる。また、こうしたちょっとした困りごとへの対応であれば、誰でも気楽に参加することができる。