籏野氏と堤氏が注力してきたのは、プロボノ活動である。プロボノとはラテン語が語源であり、公共善のために自分のスキルや専門性を活かして行うボランティア活動を意味する。籏野氏と堤氏は、プロボノの中間支援団体の最大手である認定NPO法人サービスグラントと連携しつつ、活動を推進してきた。
プロボノで得られる学び直しの効果
2人が情熱をもって八王子でのプロボノ活動を進めるのは、次のような理由による。まずプロボノ参加者(プロボノワーカー)は、社会貢献の実感で自己効力感(自分は、何かをやることができるという感覚)を得ることができる。現役時代のプロボノワーカーにとっては、サードエイジの地域活動参画への助走になるとともに、その体験が所属組織の業務に活きるということもある。また、支援する市民団体からの刺激を受け、それが自己理解につながる。
定年後のプロボノワーカーにとっては、地域社会とのつながりを構築することができる。また自分の専門スキル以外に、コミュニケーションスキル、コンセプチュアル(概念化)スキルの重要性に気づくという学び直しの効果がある。
八王子市市民活動支援センターのプロボノでは、現役世代から70代のプロボノワーカーまで、年齢に関係なく同じ立場で自由に発言しているという。2人は、このような雰囲気によって、プロボノにおいては個人の尊重、多様性理解の場がおのずと作り上げられていると感じている。
継続的に参加動機を持ってもらうために
2人が今後のプロボノ活動の課題と考えていることは、次のとおりである。第1に、八王子市市民活動支援センターのプロボノはシニア層が中心のため、もっと現役世代、学生の参加を増やしていきたいということ。第2に、市民団体が抱える課題はIT(情報通信技術)、ホームページやSNSによる発信、そのほかの広報関係、経理関係が多い。そのため、これらの専門性やスキルを持つプロボノワーカーには繰り返し参加してほしい。ところが、現段階のプロボノは、無償ボランティア(ただし、交通費実費支給、会議室無料、コピー代無料の扱い)である。時代の流れは有償ボランティアへと変わりつつもあるが、上記の専門性やスキルをもつプロボノワーカーに継続的に参加動機を持ってもらうためには、工夫が必要ということだ。