地域活動をスムーズに進めるためのルールや、そういったルールを守れない、地域の「マウンティングおやじ」と呼ばれる人々。一体彼らはなぜ、周囲の人に対してマウントを取ってしまうのか。
ここでは、経済コラムニストの大江英樹氏による『定年前、しなくていい5つのこと 「定年の常識」にダマされるな!』(光文社新書)の一部を抜粋し、定年退職を契機にシニア男性が「マウンティングおやじ」となってしまう要因について紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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「マウンティングおやじ」とはいったい何か?
地域活動をスムーズにできるようになるためのルール、それはたったひとつしかありません。それはひたすら自分を主張せず、謙虚にすることです。
ところがサラリーマン、特に大企業で管理職をやっていた人には、これが難しいのです。私は前節で「地域コミュニティはそれほど甘いものではない」とか、「慎重にやった方がよい」と言いましたが、その理由は、定年退職したシニアがなかなか謙虚に振る舞うことができないからなのです。
数年前から「マウンティング」という言葉が話題になっています。マウンティングというのは本来、哺乳類などの動物が自分の優位を示すために相手に馬乗りになる行為です。そんなイメージから、人間関係において「自分の方が優位だ」ということを誇示したいという気持ちの強い人が、そのことをアピールしたがる言動を「マウンティング」と言うのです。
そして定年退職した男性は、人が集まる地域コミュニティにおいては、そんな「マウンティングおやじ」になりがちです。なぜなら、そもそも彼らは現役時代から、会社の中でマウンティングおやじと化していたからです。
会社にいる間はまだいいけれど…
具体的には彼らはどういう行動を取りがちなのでしょう。たとえば女性社員に対して、何ごとも上から目線で話しかける、あるいはコンビニのレジで従業員にやたら偉そうに接する、そして部下と飲みに行くとやたら説教っぽくなる。若い人から見ると、どこの職場にも必ず何人かこういうマウンティングおやじはいるはずです。
それでも、会社に在籍している間はまだよいでしょう。なぜならそんなおじさんも立場上は一応上司ですから、部下は面倒だと思ってもウンチクに付き合ったり、昔の仕事の手柄話を聞いてあげたりします。なにしろ日本の若者はとても優しいのです。
ところが定年退職した後に、そんな調子で地域コミュニティにデビューしたら、いったいどんなことになるでしょう。考えただけでもおぞましい光景が待ち受けています。
まず地域活動では、地域の主婦が主力メンバーです。そこに前節でお話ししたような長老もいます。すなわち彼らから見れば、あたかもそれまでの間、微妙なパワーバランスの上に成り立ってきた中東の地域に、突然武装した米軍が入ってきて傍若無人に振る舞うようなものです。たちまち嫌がられることは間違いありませんし、あちこちで強い抵抗を受けることは目に見えています。これでは、地域コミュニティに入り込んで仲間にしてもらうことはまず無理でしょう。