定年退職するとマウンティングしたがる理由
どうしてサラリーマンが定年退職すると、「マウンティングおやじ」になりがちなのでしょう。前述のように、そもそも高齢期の管理職はマウンティングしたがる傾向はありますが、それ以上に私は、その理由が退職後の“淋しさ”にあると思っています。
彼らの多くは、サラリーマン時代に管理職だった人です。言うまでもなく部長や課長というのは、その部や課では序列は最上位です。役員になれば、もっと上になります。つまり、現役時代に高い地位にあった人ほど、「立場が上にいる」ということが常態であるため、定年後にタテ社会からヨコ社会へ移ってフラットな一個人になってしまうと、自分の優位性がなくなってしまう淋しさから自分をアピールしたくなるのだと思います。
でもこれは、相手からすれば明らかに迷惑です。特に地域コミュニティではそうです。上司であれば、仕方なく付き合わざるを得ないものの、近所に住んでいるだけの知らない定年退職者から偉そうにされたくないのは当たり前です。
そんな現実の状況も知らないのに「定年後は地域の付き合いを大切に」などという無責任なアドバイスをするセミナー講師の話を鵜呑みにして、「まあ仕方ないから、自治会の役員でもやってやるか」とばかりに上から目線で乗り込んでくるおじさんが、地域で歓迎されるはずがないのです。
アウェイからホームへ移籍する
多くのサラリーマンは会社ではずっとホームで戦ってきています。でも地域コミュニティでは、自分はアウェイの立場なのだということを忘れてはいけません。だとすればとにかく、コミュニティの一員として認めてもらうためには、一にも二にも謙虚であること、何をやるにしても雑巾がけから始めるのだという心づもりでいないと駄目です。地域で受け入れてもらいたいのであれば、何よりも「人の役に立つこと」から始めるべきです。私はそんなことをするのが面倒なので、地域との付き合いは最小限にしているのです(笑)。
とはいえ、夫婦でずっとその地域に住んでいて、かつ奥さんが専業主婦だったというような場合であれば、自分はアウェイでも、奥さんはホームという場合もあります。つまり、奥さんは以前から地域のコミュニティに入って活動していたりするようなケースです。
このような場合は、「ああ、この人は〇〇さんの旦那さんなのね」ということで受け入れてもらいやすくなる可能性は高いでしょう。そう、地元にとってのアウェイの選手ではなく、ホームの選手へと移籍を認めてもらえるかもしれないのです。
ただ、ここでひとつ誤解してはいけないことがあります。それは、「定年後の男性は受け入れてもらいにくいけれど、女性であればヨコのコミュニケーション能力が優れているので、働いている女性が定年になっても、すぐに地域コミュニティに溶け込めるだろう」と考えてしまうことです。