ここ数年、新型コロナウィルスの広がりにより自粛を余儀なくされていた「音楽フェス」。今年は春先からの開放ムードを受けて開催に踏み切ったイベントも多く、老舗の『フジロックフェスティバル』をはじめ、大型フェスに多くの参加者が見込まれている。
フェス参加者といえば、音楽好きであることはもちろん、アクティブで、仲間でワイワイやるのが好きな爽やか系というイメージだが、実際には静かな独り客も多く、その目的は多種多様。なかには人が集まる場所を狙った犯罪者や、様々なトラブルを起こすようなちょっとヤバい人も潜んでいるそうだ。
ライブ中の盛り上がりに紛れて痴漢
フェス歴12年という、井上菜々さん(仮名・34歳)は、純粋に音楽を楽しもうと参加したフェスで、何度も嫌な経験をしたという。
「基本的に自分勝手な人は迷惑ですよね。大声を出して歌ったり、まわりにぶつかるほど踊り狂ってたり……。酒に酔って、ナンパしてくる男性グループも対処がめんどくさいのでイヤですね。
あと、痴漢もけっこういます。ライブ中は盛り上がっているので、一瞬わからないんですけど、明らかに狙って触ってきてるんですよ。でも、犯人の手を掴んで捕まえることまではしたことないですね。せっかくの雰囲気に水を差しちゃうかな、と思ってしまって」(井上さん)
フェスの伝統として、参加者の自治性に任せるという不文律があるようで、軽めの犯罪やトラブルは表面化することは少ないようだ。
「はじめてみんなでフェスに行ったとき、各ステージから同じくらいの距離の場所にレジャーシートを敷いて簡易的な拠点を作ってたんですよ。各自が好きなアーティストのライブに行ったり、グッズを買ったらそこに戻ってくる、みたいな。
基本的には誰かが留守番してたんですけど、全員が観たいステージがあって、荷物を置きっぱなしにしてみんなでそこを離れちゃったんです。帰ってきたらレジャーシートがなくなって、リュックだけが置かれてました。
『レジャーシートを盗む人なんているんだね』とか話しながらリュックの中を見たら、さっき買ったばかりのTシャツやタオルも盗まれていました。自分たちが悪かったな、と思って特に届け出もしなかったです。ただ、これ以降は買ったTシャツはその場で着ることにしています」(井上さん)