ちょっとした動きを読まれ、攻撃をかわされる…
「偶然、大型のカッターナイフを胸ポケットに入れていた。刃を長く出すと折れると思って、少しだけ出すことにした。
熊は終始立ち上がらなかった。鼻が目の前1mのところにあったので、カッターで3回、目を狙って切りつけた。
だが、私が肘を引いただけで、動きを読んだらしく、熊は素早くかわした。
しかし3回目は、右の目の下を少し切ったかもしれない」
「滑りそうになって、少し振り向いたら、熊がだーっと襲ってきた。
が、向き直ったら下がった。
熊に背を向けると危険だと思い、目を見ながら、右腕を尻の後ろに伸ばし、長めの笹の根元を切り取って、先を尖らせた。
その尖った笹を、熊の右目めがけて突き出したら、目の下に刺さり、熊は逃げた」
「鼻先に赤い血糊が貼り付いていた」
「夢中で斜面を上がり、県道に置いた車に戻ると、パジェロの辺りにテントが立ち、10数人の警官や消防団がいた。
県道には警官が2人と婦人が3人いた。婦人たちに熊に遭遇したことを話すと、2人は入山を断念し、1人は笹藪に入って行った。
警官が前日から第3犠牲者がこの付近で行方不明だと言った」
「一旦、皆から離れたが、Uターンして警官に『あの付近に第3犠牲者がいるのではないか』と通報したが、興味を示さなかった。
報道各社の記者5人に取り囲まれ、体験談を話すように言われ、仕方なく応じた」
「遭遇時に既に熊の顔には傷がいくつかあった。左目上の額の傷は古く、毛が抜けて幅が2cmほどの稲妻型のハゲになっていた。
鼻先の右側に赤い血糊が貼り付いていた。切られた傷なのか、動物を食べた血なのか分からなかった。」
「被害者が出ても山に行く」危機感のなさが事件を拡大
「そのあと熊取平へ行くとタケノコ採りの3人と出会い、一緒にゲートを越えて林道を行くと、子グマの糞があった。先を走っていた犬が吠え、誰かが『熊を見た』と言ったが、冗談だったかもしれない」
「27日に護身用に太さ2cm、長さ160cmほどの鉄パイプを尖らせて槍のようなものを作り、ナタも持参した。が、笹藪の中ではどれも重くてやめた。