まだ初回を観ただけだが文句なしの面白さだ。東京近郊の駅から、つくばエクスプレスで秋葉原を目ざす多くの乗客たち。
最寄り駅のホームでは、いつもの電車が入線し、乗客は車輛に乗り込み、そして架線が一瞬光ると電車はトンネルに吸い込まれ、衝撃音を発し脱線した。
美容師の萱島(かやしま)直哉(山田裕貴)、消防士の白浜優斗(赤楚衛二)、高校の体育教師、畑野紗枝(上白石萌歌)らの乗った車輛は森林地帯に取り残された。
冒頭から、いきなり異世界へGO! スピード感たっぷりだ。直哉だけが駅に向かう途中、深刻な顔して、これからある人物に会いにいかねばならない。
突然、自分が乗り合わせた電車が見知らぬ土地に放りだされたのを知り、誰もがパニック状態に陥って、勝手な言動をおっ始める。ただ一人冷静に対処し「皆さんの名前と年齢や職業などのリストを作成しましょう」と呼びかけるのは優斗。さすが消防士だ。
多くの視聴者が、楳図かずおの大傑作マンガ『漂流教室』と、それをドラマ化した『ロング・ラブレター~漂流教室』を想起したようだ。楳図マンガでは大地震で小学校が丸ごと未来に飛ばされ、常盤貴子と窪塚洋介が主演のドラマ版では三〇人の高校生と教職員が異世界に取り残された。
優斗と紗枝が車輛を離れて調べると、荒涼とした砂漠が広がっている。乗員乗客は六八人。水も食料も尽きかけた。ここで、どう生きるのか。サバイバル劇がテンポ良く始まる。
僅かな食料をめぐり諍いがおきる。達者な脇役がいると、人間の愚かさが露呈し、ドラマはにわかに活気づく。善人だけでは駄目。エゴ丸出しで小集団が疑心暗鬼となって対立、抗争し、自滅する者も出るのがサバイバル劇の特質だ。
三〇年後の砂漠化した近未来に時間転移したことが初回のラストで判明。ここでどう生き延びるかが、ドラマの見せ場だ。
さらに今作では誰もが辛い過去に縛られている。直哉は少年刑務所をきょう出所する弟を迎えにいくところだった。
現実世界で路頭に迷う弟を思い号泣する山田裕貴の姿が切なく、胸を打つ。マジメな消防士役の赤楚君も存在感を増した。彼も先輩隊員を救えなかった過去を背負っている。水と食料の争奪戦も見せるが、このドラマでは乗客が秘めた過去の凄惨な体験が明かされる場面がより重要なポイントだ。
自分勝手なネイリスト玲奈を演じるのが古川琴音って贅沢だなあ。やはり周囲を困らせる会社員は杉本哲太で、会社を経営する主婦役は松雪泰子と、脇も手堅い。副題はハッピーエンドを微かに予感させるが、まだまだノンストップの生き残りを賭けた闘いが続きそうで目が離せない。
INFORMATION
『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』
TBS系 金 22:00~
https://www.tbs.co.jp/p_train823_tbs/