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朝ドラ『らんまん』主人公のモデル「日本の植物学の父」と呼ばれた牧野富太郎が、6歳で経験した"あまりに壮絶な別れ"

source : 提携メディア

genre : エンタメ, 歴史, テレビ・ラジオ

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富太郎が生まれた頃の佐川では、改名という風習があった。「家名」といわれる生まれた時に与えられた名前を、のちに別の名に改める習慣である。両親、祖父を相次いで喪う不幸が続いたことから、心機一転と運が開けることを願った浪子は、彼の名を家名の「誠太郎」(臍の緒袋の表書きでは「成太郎」と記されている)から「富太郎」に改名する。「牧野富太郎」の誕生である。

彼が富太郎に改名された1868年は、奇しくも265年間続いた江戸幕府が統治権を天皇に返上し、武家政治に終止符が打たれ、社会のしくみも革(あらた)まった、新しい年の始まりとなった明治元年である。偶然とはいえ、何か因縁深いものを感じるのは筆者だけではないだろう。

大場 秀章(おおば・ひであき)
東京大学名誉教授
1943年、東京都生まれ。東京大学総合研究博物館特招研究員。植物多様性・文化研究室代表。日本植物友の会会長。理学博士(植物分類学専攻)。著書に、『バラの誕生』『道端植物園』『植物学のたのしみ』『はじめての植物学』など多数。
朝ドラ『らんまん』主人公のモデル「日本の植物学の父」と呼ばれた牧野富太郎が、6歳で経験した"あまりに壮絶な別れ"

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