昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2018/02/20

genre : ライフ, グルメ

「染まり系」タイプの出汁、できたての麺

 入店して真っ先に目に入るのは、階段の下に置かれた古めかしい製麺機だ。毎日毎朝、そば・うどんを粉から練って、麺帯を作り切刃で麺切りして製麺している。狭小の極みのような店だから逆に自家製麺しようと考えたのだろう。製麺後に麺茹でをするのだが、朝早くに行けば、茹で立てピカピカのそばやうどんに遭遇できる。この旨さは絶品だ。そんな時「八ちゃん、世界一うまい」というと、その時だけはお茶目に笑顔を見せてくれる。

粉に手を出す八ちゃん

 つゆはかつお節などを丁寧に引いた出汁を使い、濃い目の返しを使った江戸東京を代表する「染まり系」のタイプである。冷やしにしても、アツアツのつゆにしても、色味ほどしょっぱさはなく、出汁の香りが滋味深い最良のつゆだ。

 天ぷらは干しエビが少し入ったかき揚げとちくわ天だけと潔い。やや低温でじっくり揚げており、揚げ色は浅く揚げ具合はしっとりとして油切れはよく、つゆに載せても油が染み出ることはない。

 この麺とつゆと天ぷらの調和した一杯が、浅草橋の常連達にとっての朝メシの必須アイテムというわけである。

製麺機も年代もの

「米類の販売はしておりません」

 ところで、メニューをみるとサイドメニューは置いていない。「当店では米類の販売はしておりませんので、持込でお願いします」と張り紙されている。

 八ちゃんに聞いてみると、「おにぎりとかコンビニ弁当みたいなのをもってくるやつは、たまにいるよ。そばを食べてくれればいいよ」とのこと。

八ちゃんからの「お願い!!」

「西口やきとん」の常連さんに浅草橋界隈で持ち込める昼飯でおいしいものはないか聞いたところ、「肉の池田屋」の「焼豚ライス(小)」304円と、「信濃屋」の「タラコおにぎり」110円が秀逸だとか。そこで、別の日に、早速、常連さんと2人で購入して「ひさご」に、突撃!私の昼ごはんだ。

肉の池田屋

焼豚の煮汁がかかったライスは「そばつゆ」に合う

 午後1時過ぎに「ひさご」に到着すると、八ちゃんが店前でそば粉と小麦粉を混ぜて製麺を開始するところ。挨拶して、「天ぷらそば」を注文し、「焼豚ライス」と「タラコおにぎり」をおもむろに取り出して準備万端。着丼と同時に、そばをすすったり、「焼豚ライス」や「タラコおにぎり」を食べたり。「肉の池田屋」の「焼豚ライス」は焼豚の煮汁がかかったライスで、味もしっかり。そばつゆにもよく合う。「タラコおにぎり」は生のタラコが入ったタイプで珍しい。持ち込みは下町ゆえのありがたいゆるさといったところだ。

浅草橋究極の組み合わせである

 八ちゃんはアイドリングタイムには赤い自転車に乗って周りのお店を冷やかしによく出かけている。そんな時、歩いていてみつかると堪らない。「また、おまえ、さぼってんのか~」。慌てて逃げるのだが、それでもしばらくすると、また「ひさご」に足が向いてしまう。

INFORMATION

ひさご

台東区浅草橋1-17-2

営業時間 6:45~18:00
定休日 土・日・祝 

 写真=坂崎仁紀

この記事の写真(8枚)

+全表示

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー