日本を動かすエリートたちの街、東京・霞が関から、官僚の人事情報をいち早くお届けする名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。月刊「文藝春秋」2023年6月号より一部を公開します。
◆◆◆
ヘリ事故対応に批判の声
陸上自衛隊に衝撃が走った。第8師団長に就任したばかりの坂本雄一陸将(防大35期)が、沖縄県宮古島沖のヘリ視察中に消息不明となり、死亡が確認された。統合幕僚監部防衛班長、陸上総隊司令部運用部長など陸自エリート本流を歩み、同期で最も早く陸将に昇進。「将来の陸上幕僚長候補で、損失は極めて大きい」(陸自幹部)と、関係者は一様に肩を落とす。
中国の海洋進出にさらされる南西諸島の防衛を担う第8師団の存在感は増しており、3月末に制服組トップの統合幕僚長に就任した吉田圭秀氏もかつての師団長だ。1986年に東大工学部を卒業し陸自入隊。防大出身以外での統幕長は初めてで、北部方面総監や陸上総隊司令官のほか、内閣審議官として国家安全保障局(NSS)出向経験も持つ「これまでにない制服トップだ」(同前)。
陸自出身の山崎幸二前統幕長(防大27期)から吉田氏への継投により、陸海空でのたすき掛けだった統幕長人事の慣例が崩れた。特に空自は岩﨑茂元統幕長(防大19期)以来、およそ9年近くポストから遠ざかっている。空自は防大卒業者を見ても、陸海に比べ少数派。組織全体でみれば陸自の規模は圧倒的だ。
一方で近年、空自は宇宙領域も担当。「航空宇宙自衛隊」への名称変更も視野に入れる。山崎氏やその前任の河野克俊元統幕長(防大21期・海自)の在任期間はおよそ4年。仮に吉田氏在任が同程度になれば、空自内では那覇の南西航空方面隊司令官や統幕副長を歴任した鈴木康彦航空総隊司令官(防大32期)が有力候補になると目される。
今夏の背広組人事は鈴木敦夫次官(昭和60年、旧防衛庁入庁)の去就が焦点だ。
宮古島沖での陸自ヘリ不明事故ではネット上での「中国軍による撃墜」説に対応が遅れ批判を浴びるなど、必ずしも手腕は芳しくない。鈴木氏が1年で交代すれば、後任には増田和夫防衛政策局長(63年)や、芹澤清官房長(61年)の名前が挙がる。