大阪万博の不安材料
岸田文雄首相を迎えて起工式を行い、開幕まであと2年を切った2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)。いよいよ準備が加速する時期だが、不安が漂う。国、自治体、民間を束ねるべき万博協会に求心力がないためだ。
協会は経団連の十倉雅和会長を代表理事・会長に組織しているが、実質的なトップは石毛博行事務総長(昭和49年、旧通産省)だ。石毛氏は中小企業庁長官、経産審議官を最後に退官、日本貿易振興機構(ジェトロ)理事長の後に満を持して事務総長に就任した。ところが、この石毛氏が「混成部隊」の協会を束ねることができていない。
高度成長と大阪の躍進を印象づけた1970年万博で事務総長の大役を果たしたのは鈴木俊一元東京都知事(8年、旧内務省)だった。自治庁事務次官、岸信介内閣で官房副長官にもなった鈴木氏は東京都副知事から万博協会に転じた。当時の万博は後に作家・堺屋太一として名をなす池口小太郎氏(35年、旧通産省)も企画立案に携わるなど、綺羅星のごとき人材がかかわった国家プロジェクトだった。
その当時と今回は比べるべくもない。副事務総長の東川直正氏(平成元年、旧建設省)も道路や河川の専門家で、大所帯を切り盛りするには向いていない。
東京五輪は事後にスキャンダルに見舞われたとはいえ、1年延期でも乗り切れたのは武藤敏郎事務総長(昭和41年、旧大蔵省)の手腕によるところが大きい。
70年万博の鈴木氏、東京五輪の武藤氏といった大物官僚に比べ、大阪・関西万博の石毛氏の力不足が際立つ。
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「霞が関コンフィデンシャル」の全文は、「文藝春秋」2023年6月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています。