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「あ、お兄さん警察じゃないですよね?」元彼のホストに貢いだ金額2000万円…20代で「立ちんぼホームレス」になった彼女の人生

『Z世代のネオホームレス』 #1

2023/05/20
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髪はボサボサ、ピンクのロンTの女性は…

 ホームレスにインタビュー取材を続けたおかげで、僕にもある程度は眼力のようなものが備わってきたのかもしれない。その女性を目にした瞬間、僕は彼女がホームレスであることを察知した。髪はボサボサで、ピンクのロンTにはところどころ染みのような汚れがついている。

 そして、公園の周りに点々と立つほかの女性たちとは決定的な違いがあった。それは、ほかの女性たちは立っているのに、自動販売機の横にいる彼女だけが地べたに座り込んでいることだ。

 自動販売機の灯りを頼りに目を懲らすと、公園の周りに立つ女性たちがメイクやファッションに多少なりとも気を遣っていて、群がる男性から少しでも視線を集めようと努力しているのが見て取れる。だが、座り込んでいる彼女だけがスッピンだった。間違いない。彼女はホームレスだ。僕はそう確信して自転車を公園の横に停め、その女性に声をかけた。

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「すみません。僕、青柳と申します。今、ネットカフェなどに寝泊まりしている方の取材をさせていただいてるんです」

 ホームレスだと確信はしたものの、女性は見たところまだ20代。これまで僕が会ってきたような、ダンボールやテントで寝泊まりするタイプのホームレスと同じタイプには見えなかった。

「ホームレス」という断定的な単語を避けて「ネットカフェ」というワードを使ったのは、そうした僕なりの“予測変換”が頭の中で咄嗟に反応したからだ。

 その女性は黙ったまま僕の目を見上げた。すごく虚ろな目だった。

「よろしければ、少ないですが謝礼をお支払いするので、ちょっとだけお話を聴かせていただけないですか?」

「……いいですよ」

 これが、マナミさんとの出会いだった。

「ちなみに、今ここで何をしてたんですか?」

「立ちんぼです。あ、お兄さん警察じゃないですよね?」

「立ちんぼをしている」というマナミさんの返答を聞いて、僕は少し意表を突かれた。今い る場所からして、彼女が立ちんぼをしていることはもちろん想定の範囲内だったが、それを正直に、会ったばかりの男に話してしまう、というマナミさんの反応が僕には意外だった。僕は「カメラを向けられているのに、こんなことを言ってしまうなんて……この子、大丈夫かな?」と感じて、警戒心の薄いマナミさんのことが少しだけ心配になった。

 僕はマナミさんと同じように自動販売機の近くにしゃがみ込んで、本格的に彼女へのインタビュー取材を始めた。

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