「青木がいなかったら、村上はもっと堕落してるよ」名将・広岡達朗が今のヤクルトと西武に言いたいこと
文春野球コラム ペナントレース2023
「西武はとても清潔なチーム」
2020年6月発売の『Number1005号』の特集は「ライオンズ70周年完全保存版 獅子の遺伝子」と題して、大々的に西武特集が組まれている。このとき、「辻発彦&広岡達朗 時を超える監督哲学」と題して、当時の辻監督と広岡さんにインタビューを行った。その際に、広岡さんはこんな言葉を発している。
「西武は清潔なチームなんです……」
「清潔」という言葉が、とても印象に残った。この言葉には、どんな意味が込められているのか? 改めて尋ねた。
「最初、私ではなくて長嶋(茂雄)のところに監督の話がいきました。でも、長嶋に断わられた。他にも候補はいたようだけどそれも断わられて、私のところに就任依頼が来ました。そこで私は、あらゆる本を読んで、《西武》という企業について調べたんです……」
その結果、企業理念、人材育成面などにおいて、広岡さんは「西武というのは清潔な企業である」という認識を得る。その結果、「当然、西武ライオンズも清潔であらねばならない」と思い至った。そしてここから苦言が続く。
「清潔感のないピッチャーがいるでしょ。オレだったら絶対に許さん」
「……西武とは清潔なチームなんです。私はそんな思いでチームを率いてきましたよ。ところが、今のライオンズはどうです? 女の子のように髪の毛の長いのがいたり、ひげを生やしたり、清潔感のないピッチャーがいるでしょ。オレだったら絶対に許さんな」
広岡さんの脳裏には、「髪の毛」ではエースの高橋光成や今井達也が、「ひげ」では本田圭佑、そしてやはり高橋の姿が浮かんでいるのだろう。
「そして、山川……」
当然、その話題が出ることだろう。プロとしての矜持、四番としての責任、家族の長としての自覚……、さまざまな叱責の後、ここからしばらくの間、「昭和選手の女性スキャンダル」の話が続いた。やはり、山川に対しても厳しい発言ばかりだった。だからこそ、広岡さんは言う。「ライオンズよ、もっと清潔であれ」、と。
冒頭で述べたように、ヤクルトと西武、両チームを日本一に導いたのは広岡さんだけだ。いずれも、就任当初は低迷していたチームを短期間で強化した実績はいくら評価しても、評価しきれないほどだ。「さすがに、もう球場に行くことは難しくなった」と言いつつ、日々のペナントレースには厳しい視線を送り続けている。91歳を迎え、なおも意気軒昂。広岡さんには、いつまでもプロ野球界を見つめていてほしい。
「わからないことがあったら、いつでも電話してきなさい」
お言葉に甘えて、これから頻繁にお電話をするつもりだ。さぁ、ヤクルトと西武、今日はどんな戦いを見せてくれるのだろうか?
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