「ハリケーン」のような勢いとパワー
そして、いよいよやってきた5月25日。待ちに待った5月25日。エスコンフィールドに1軍登録された加藤選手の姿がありました。初打席で初ヒットを放った後は、試合に出場するたびに安打を積み重ねて、5月31日のヤクルト戦では2打席連続ホームラン。そして、デビューから10試合連続安打という2リーグ制後のタイ記録を打ち立てた。出られなかった試合の分を取り返すかのように、快進撃が止まらない。今シーズンのこれまでの打席を見て、気象予報士の私は、加藤選手に「ハリケーン」のような勢いとパワーを感じました。
そもそも、「ハリケーン」というのは、「台風」と同じ性質の熱帯低気圧。では、「台風」と「ハリケーン」の違いは何かというと、どこに存在しているかということ。北大西洋やカリブ海、東北太平洋などといった、アメリカ周辺に存在する熱帯低気圧を「ハリケーン」というので、アメリカ出身の加藤選手は台風ではなく、まさにハリケーンなのです。大雨や暴風といった影響をもたらすイメージがあると思いますが、実は、一番影響が長引くのは、海を動かす大きな「うねり」。天気コーナーで気象情報を伝える時も、まずは波の情報が気象庁から発表されます。加藤選手のフォームは、足を上げない打ち方で、どちらかというとコンパクトなスイング。だけど、力はしっかりと伝わっていて、試合をゆっくり動かすような波を作っているように感じます。
1軍に登録されてすぐのころは、6番で打席に入っていましたが、その後は、じょじょに打順を上げて、ここ最近は3番とクリーンナップのはじめに。とにかく打率がよく、現在(6月13日)は.345。1、2番のバッターが作り出したチャンスを得点につなげることもできるし、ヒットを打って出塁することで、4番以降にチャンスをつなぐこともできる。試合を動かす大きな役割をこれからも期待したいです。
さあ、交流戦もあとわずか。横浜DeNAベイスターズとの3連戦が始まっています。加藤選手が生み出す波が、ファイターズ全体でさらに大きな波となって、調子のいい横浜打線を超えていきたい。勝ちを祈って、きょうも精一杯エールを送ります。
追記 今回対戦相手の檜山気象予報士。私は気象予報士になる前から、テレビで檜山さんの天気予報を見ていました。昨年度、NHKでの出演が決まった時、「わ! 檜山さんに会える!」とワクワクしていたんですが、出演時間が違うので、毎日同じ部屋で働いているにもかかわらず顔を合わせることはほとんどありません。今も私にとっては「テレビの中のレジェンド予報士」なんですが、今回、このような場所でご一緒できる機会をいただけてとても嬉しいです。天気の知識も、野球の知識も檜山さんに追いつけるように、これからも精進したいと思っています。
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