もう地味とか目立たないとか言われないようになってるかなあ
《僕の今後の青写真は、新球場完成まではバリバリに投げ、あとの2年は出番を減らしつつもチームに貢献し、40歳でユニフォームを脱げたら、最高。》(廣済堂出版、宮西尚生『つなぎ続ける心と力』より)
2020年時点での本人のこのプラン、昨年が「バリバリに投げ」とはいかなかった分エスコンフィールドでもバリバリ投げていただく軌道修正は必要かと思われますが、大体この通りに推移したとしてその終着点、厳粛かつ華やかな引退試合の様子を想像してみるのはちょっと胸躍ることなのです。一体どこまでホールド記録を伸ばしているだろう。どのくらいのレジェンド選手になっているだろう。いくら何でもその頃には、もう地味とか目立たないとか言われないようになってるかなあ。
いや真面目な話、彼のキャリアのフィナーレを今から妄想してみたくなるのは、自分を含むF党一般とそれ以外の野球ファンやメディアとで彼の像が極端に違うせいもあるんですよね。節目の記録で記事の主役になる度に、いつも・必ず・またしても「日頃は目立たない縁の下の力持ちだが」的な書かれ方をする訳なのですよ。
一般的イメージとしてのリリーバーではなく宮西尚生という特定の選手は、ファンや地元メディアや球団にとってどんな存在なのか。新本拠地エスコンフィールドにはファイターズの歴史を絵入り年表風に示した一角があるのですが、2012年から2022年の栗山英樹監督時代、指揮官を囲むように配置された5人の中心選手の写真の中で、一番大きく一番手前に置かれているのは中田翔でも大谷翔平でもなく宮西尚生なんです。
と、エスコンフィールドの話をしたついでの、おまけの妄想。この球場には入口から出口までが一方通行のONEWAY RESTROOMというトイレがいくつかありまして、またその中のいくつかは、出口の壁に新庄剛志や大谷翔平の「名言」が書かれているんですね。
トイレでいきなり《追い込まれれば追い込まれるほど楽しくないですか?》だなんて言われたら、いくら相手がダルビッシュ有でも腹が立たないかとの懸念はなくもないですが、それはさておき「全部がこうじゃないのは何でだろう」と少しだけ気になっていました。最近ふと思いついたのが、今後のために空けてあるのでは?ということ。今いる選手達の誰彼が、この先チームのレジェンドと見なされるまでの存在となり、その言葉が新しく壁を飾る日が来るのかもしれない。だとしたら、今のところその筆頭候補は宮西尚生なんじゃないでしょうか。
彼の「名言」を選ぶとしたら、座右の銘「勇往邁進」や信条「抑えてなんぼ」もいいのですが、妄想なので自分の好み全開でいきましょう。もう8年ほども前にテレビで聴いた発言です。ツイッターに書き留めたものの番組名や放送日時は抜け落ちているという頼りなさなのですが(ほんとツイートの詰めが甘いな自分)、こんなようなことをかつて確かに宮西尚生は言っていました。2016年の日本一を、まだ誰も予想もしない頃です。
勝つに決まってるチームにいたってきっと面白くないと思うんです。最下位になる可能性もあるチームが優勝を目指すのがいいんですよ。
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