文春オンライン

「インスタ映え」×「ポジティブ思考」が作るネット内ムラ社会

お前ら本当にそれ楽しいの?

2018/02/22
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 よくニホンザルが群れの仲間同士で毛づくろいしてるじゃないですか。

 インスタにハートつけてる人たちって、要するに人間が社会的に生きていくためにやるグルーミングだと思うんですよね。私はあなたの仲間ですよ、あなたのクソ写真を見てますよ、っていう意思表示ではないかっていう。

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イラつきとは裏腹にとる「いいね」という行動

 人類学者のロビン・ダンバーさんというおっさんが提唱した「ダンバー数」ってのは、そういう“人類が安定的な社会関係を維持できる人数の認知的な上限”を指しておりまして、その数は約150人ぐらい(100人から250人程度まで)とされています。

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 そういう理性的な思考からすれば、インスタやFacebookの「いいね」だろうがLINEグループの既読だろうが、どれもネットの最新技術を使った「あなたを尊重していますよ」という意味をあらわすものだと思うのです。

 しかし感情は別だ。私の聖なるタイムラインにババアが夜プール浸かってポーズ決めてる写真が流れてきたのを、ほろ酔いの帰宅途上の電車の中で閲覧してしまったときに感じる怒りはどこにやればいいのか。喜べ、お前の葬式ではその画像を白黒にして遺影にしてやろう。

 あるいは飯テロの類。長蛇の列になっているスーパーのレジ待ち中に見せつけられる、パリピが料理や酒を囲んでウェーイとやってる画像。ぎゅうぎゅう満員の通勤電車に揺られている最中に友人がスキーリフトに乗っている写真。ムカつくんですよね。神風でも吹いてリフトからまっさかさまに落ちねえかな。そのように思うことが少なくないのであります。

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 しかし、刹那に感じたイラつきとは裏腹にとる行動は違います。あろうことか、イラ立つ感情を見事なアンガーコントロールのもと吐く息とともに制御し、おもむろに 「いいね!」を押したりハートをつけたりするのです。ちくしょうと思いながら、羨ましいと感じながら、年寄りの車椅子を押しながら付けるハートに込められた思いを、お前らは受け取っているでしょうか。