あの子やあの人がセクハラやパワハラで心を壊し休職したり退職したりせざるを得なかった会社の話を、わたしはいくつか知っている。しかしあの子やあの人が立ち去った会社にあとから転職し、のびのびと能力を発揮している女性たちのことも知っている。そうした人から仕事を依頼されたときに、あの子やあの人の顔が浮かんだりもする。どうしたらいいんだろう。
そうわたしが考えなければならない状況を作った人々に腹が立つが、わたしも過去にそういう状況の一人であったことに思い至ってしまう。やっぱり、あの日彼女といっしょにオフィスを去っておけばよかっただろうか。あの頃に戻りたい気持ちは1ミリもないが、あの日だけはやり直したい、と今でも思う。
※『それでも女をやっていく』「代わりの女」より
