児童養護施設出身者に振袖を着る機会を提供するボランティア団体「ACHAプロジェクト」の運営や、被虐待経験者などへの支援活動を行う、山本昌子さん(30)。

 山本さんは、自身も生後4か月で乳児院に保護され、2歳から児童養護施設で育った「ケアリーバー(社会的な保護から離れた子どもや若者)」だ。そんな彼女に、「ACHAプロジェクト」立ち上げの経緯や、虐待の後遺症に悩む当事者への想いなどを聞いた。(全2回の2回目/1回目から続く

山本昌子さん(30) ©杉山秀樹/文藝春秋

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「生まれてきてよかった」と思わせてくれた先輩の“やさしさ”

――山本さんは2016年、児童養護施設出身者に振袖を着る機会を提供するボランティア団体「ACHAプロジェクト」を立ち上げました。その経緯を教えてください。

山本昌子さん(以下、山本) 保育の専門学校に通っていた21歳の時、児童養護施設の職員志望の先輩がいたんです。私のことも、施設出身ということで普段からすごく気にかけてくれていて。あるとき「そういえば、成人式のときに振袖着た?」と聞かれたので「着てません」と答えたんですね。

 そうしたら「私が費用を出すから振袖で写真を撮ろうよ」と言ってくれて。

――すごいですね。

山本 私がSNSで孤独を吐き出したり、葛藤をしたりしているのを見て心配してくれていたそうで、申し訳なかったのですが……。でも、そう思ってくれた気持ちがとても嬉しかったのを覚えています。

 振袖を着せてもらったとき、私は「これはただの振袖ではないな」と思ったんです。私がいろんな人たちに大事にされて生きてきたことの証というか、「先輩がそれを私に伝えるために着せてくれたものなんだな」と。

「生まれてきてよかったんだよ」と伝えてもらったように感じて、すごく自分自身の力になったんです。

振袖を着て、父親と撮影に臨んだ経験もある山本さん(本人提供)

先輩の名前を借りて「ACHAプロジェクト」を立ち上げた

――それが原動力となって「ACHAプロジェクト」を立ち上げた、と。

山本 はい。同じ施設で育った後輩たちも、成人式で振袖を着られなかった子たちが多いのはわかっていたので「私も同じように気持ちを届けたい」と思ったのがはじまりです。

――「ACHAプロジェクト」の名前の由来は何だったのでしょう。