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山本 「あちゃプロジェクト」と読むんですけど、私に振袖を着せてくれた先輩のあだ名が「あちゃさん」で(笑)。そのまま名前を借りて「ACHAプロジェクト」と名付けました。

――今日は山本さんの活動拠点にもなっている居場所事業「まこHOUSE」にお邪魔していますが、お部屋のいたるところに飾られているのは、「ACHAプロジェクト」を利用して成人式の撮影をした方々のお写真ですか。

山本 そうです。みんなうちで撮影をサポートさせてもらって、着付師さん、ヘアメイクさんにも来ていただいて写真を撮りました。

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山本さんが中心となって運営する居場所事業「まこHOUSE」には、「ACHAプロジェクト」で振袖撮影をした人たちの写真が飾られていた

――みなさん、とてもいい笑顔をされていますね。

山本 最初はあまり乗り気でなかった子も、撮影当日になると、とっても嬉しそうで。とにかく楽しんで欲しいという気持ちがあるので、撮影をするのはその日に1人だけにしています。私たちがすべてサポートしようと決めて、毎回撮影に臨んでいますね。

コロナ禍で感じた児童養護施設出身者たちの“孤立”

――今月には、ご自身が監督を務めたドキュメンタリー映画『REAL VOICE(リアルボイス)』の公開が控えていますよね。被虐待経験がある全国の若者達に密着した内容となっているそうですが、撮影を決意されたきっかけというのは。

山本 コロナ禍以降、「ACHAプロジェクト」の活動も難しくなってしまって。特に、ボランティアで協力してくださる着付師さんなどには高齢の方もいらっしゃり、感染リスクを考えるとプロジェクトを一時的に中断せざるを得ない状態でした。

 そんななか「自分には、他に何かできることはないだろうか」と考えていると、児童養護施設出身の子が「2週間くらい誰とも話していない」と言っているのを聞いて。よくよく考えると、虐待されて親から逃げて生きてきた子たちは、コロナ禍で「外出自粛」になってしまうと、頼れる存在がどこにもなくなって、完全に孤立してしまうと気がついたんです。

山本さん自身も18年間、児童養護施設で育った(本人提供)

――虐待をされた当事者でなくても、人との接点がなくなって気分が落ち込んでしまう人がたくさんいるような状況でしたから。

山本 なので真っ先にやったことは、オンライン上での居場所を作ることでした。まずは400人以上もいるLINEグループを作って、それから次第に外で集まれるようになって来た頃、みんなからこれまで以上に密接に話を聞きたいと思って。

――なぜそう思われたのでしょうか。