児童養護施設などで暮らす子どもへの進学支援を行う団体「一般社団法人ゆめさぽ」の代表理事を務め、社会的養護専門情報サイト「たすけあい」の運営なども行っている、社会活動家の田中れいかさん(27)。

 田中さんは児童養護施設出身であることを公表してモデル活動を始め、現在は社会的養護の理解を広めるための啓発・支援活動をしている。2021年12月には、児童養護施設での暮らしを描いた著書『児童養護施設という私のおうち』(旬報社)も上梓した。そんな彼女に、施設退所後に感じた孤独や、親と離れて暮らす子どもへの支援活動を続ける理由について、話を聞いた。(全2回の2回目/1回目から続く)

田中れいかさん ©末永裕樹/文藝春秋

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自主的に施設を出て行った場合、支援を受けるのは難しい

――田中さんは小学1年生のとき、お姉様と一緒に児童擁護施設に入られたのですよね。しかしお姉様は、高校生になった頃に施設を出て行ってしまったとお聞きしました。

田中れいかさん(以下、田中) はい。お姉ちゃんは施設を出た後、高校1年生からアルバイトをして、誰にも頼らずに1人暮らしを始めていました。

――それはどういったきっかけだったんでしょう。

田中 施設では、高校生になっても門限が午後5時45分だったんです。高校生にとっては、いくらなんでも早すぎるじゃないですか。でも施設からは「門限だから絶対」と、どうしても抑えつけられてしまう部分があって。そういう生活に抑圧感があって嫌だったのかもしれません。

――そういう場合は、施設を出たあとの支援を受けたりはできないのでしょうか。

田中 できないですね。場合にもよりますけど、自主的に出て行ったとなると難しいかなと思います。

 児童養護施設で生活ができる上限年齢(原則18歳、最長22歳まで)になってから出て行った場合は、その後の生活のバックアップを行なっている施設や自治体が増えてきています。

 また、小学生や中学生で家庭復帰したお子さんについてもアフターケアとして職員が関わりを続けるケースも増えていますが、お姉ちゃんの場合は事情が違います。それでも「出て行く」と決めたわけですから、お姉ちゃんの意思は固かったんだと思います。

 

家庭復帰をしても再び施設に戻ってくることも

――田中さんのお姉様以外でも、途中で施設を出て1人で生きて行く方は多いのでしょうか。

田中 当時は複数名いましたよ。高校を中退して施設を飛び出す子達だったので、みんな中卒です。その場合、やはり頼るところがないので頑張って稼いで、事情によっては夜の仕事をしたり、職人の仕事をしたりして、先輩たちはたくましく生きていましたね。

――そのあたりは今後、ぜひ支援のあり方が変わってほしいなと思ってしまいますが。様々な事情で、施設で生活を送ることが困難な子や苦痛を感じる子もいるでしょうから。