どんどん自分を追い詰めてしまった2つの気持ち
――世田谷区で、家賃が1万円ですか?
田中 あ、それは区営住宅の空室を使用したシェアハウスみたいな感じで。そのときは2人で暮らしていました。
この事業は児童養護施設や里親などを巣立った子達を支援する制度で、「住宅支援」と「居場所支援」、「給付型奨学金」の3つを事業の柱にしています。
私はすでに進学してしまっていたので住宅支援と居場所支援だけを使えるということで、両方受けていました。
――自治体にそのような制度があるとありがたいですね。
田中 はい。施設を出た後は「もう誰にも頼らずに生きていく!」と思っていたのですが、その間違った自立観念が孤独感を強くしたのかなと今では思います。だからこそ自分の孤独感は誰にも言えないし、施設には帰れないし、親も頼れないしと、どんどん追い詰められてしまって。「頼る」ということがわからない気持ちと、長い間施設で生活をしていたから「もう支援される人になりたくない」という2つの気持ちがありました。
――それは自由への渇望みたいなことなんでしょうか。お話を聞いていると、「自立したい」という気持ちが強かったように感じました。
田中 そうですね。間違った「自立像」を自分の中で作っちゃって。「人に頼るのは自立じゃない、自分で全部やるのが自立だ」って自分を追い込んじゃったんですね。
経済的な理由で進学を諦める子をサポート
――田中さんが代表を務められている「ゆめさぽ」では、受験の費用などをサポートされているそうですね。どうして「受験費用」にフォーカスを当てたのでしょうか。
田中 現状、施設出身者の大学進学率が17.8%なのですが、全高卒者だと50%以上が進学しています。ただ、「進学したい」と希望する子は中学3年生で37.6%、高校1年生の時点で32.7%もいるんです。
じゃあ、このうち進学をしなかった12.2%の子たちはどうして諦めてしまったのかというと、おそらく経済的な問題だと仮定しています。
――頼る親もいない中では、生活するだけで精一杯だという人のほうが圧倒的に多いでしょうね。「経済的に可能であれば進学したい」と希望する人は、もしかしたら施設出身者のなかでも30%より多いかもしれません。
田中 そうですね。そういった子どもたちの選択肢を広げてあげたい、というのが、私たちが受験費用を支援するひとつの理由です。
もうひとつは「成功も失敗も経験してほしい」というのも意図としてあります。
――具体的にどういうことでしょうか?