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「自分の時間もほしいし、結婚もしたい」世界中から注目を集める“戦争分析のエキスパート”がいま望むこと

「自分の時間もほしいし、結婚もしたい」世界中から注目を集める“戦争分析のエキスパート”がいま望むこと

Oryx創設者シュテイン・ミッツァー氏インタビュー #3

2023/05/25

genre : ライフ, 社会, 国際

note

北朝鮮の新兵器はすべて本物

――特定のテーマを調べていると白い目で見られる、という話ですが、オランダではそういうことはないのでしょうか?

ミッツァー 私が今まで分析評価した国の中で、変なところもいっぱいありましたけど、それでも変に見られたことはないですね。IS(イスラム国)の活動について調べていた際、ヨーロッパでISが破壊活動をしていましたが、私の調査がISと関係あると思った人はいませんでしたね。

――北朝鮮では、金正恩体制になってから新兵器が盛んに出るようになった印象があります。中にはハリボテだという意見もありますが、あれはどれぐらい実体があるとお考えですか?

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ミッツァー すべて本物だと思います。実際にハリボテを展示したことはありますが、それは偽物ではなく、兵器の将来の方向性を示すものとして出されていました。例をあげると、戦車の砲塔上に見るからにハリボテという感じの対戦車ミサイルが載せられていたことがありましたが、その翌年に実働可能なものが展示されています。

 兵器の話をすると、大抵の人たちは上辺だけを見て「偽物だ」と言うんですけども、実際に北朝鮮の軍需産業を見ますと、かなりしっかりとしたものだということが分かると思います。

ウクライナ軍により鹵獲されたロシア軍のT-72戦車 ©宮嶋茂樹

武器輸出はただ武器を売るだけではない

――北朝鮮は発展途上国への武器輸出が盛んですよね。

ミッツァー 輸出に対する制限がかけられていますから、今はそれほどでもないと思います。そういった規制がなくなれば、世界最大の武器輸出国の一つになるのではないでしょうか。

――理由は安いからですか?

ミッツァー はい、最近の武器はかなり高額になっていますから。また、武器輸出はただ武器を売るだけでなく、アフターサービスも売っています。我々が分析したモザンビークへの地対空ミサイル輸出の例では、司令塔の建物が劣化して反対側が見えるような寂しいものでしたが、それを北朝鮮が建物も修復し使えるようにしました。彼らのそういった技術は侮れず、他国はやらないようなことも彼らは平気でやります。